2次がんを発症した8歳まで、『弱視』という障害はあったものの『小児がんサバイバー』という自覚はなく、のほほんと生活していました。その後、8歳の闘病をきっかけにできないこと、周りとの人との価値観の差、そこからくるいじめなど「自分は人とは違う」と落胆すると同時に、両親や主治医から「あなたは人とは違う経験をしたから、特別なものを持っていて大人すぎるんだ。だから周りと合わないだけ。」と言われ、それは自分の強みでもあることに気づきました。
それをきっかけに「もっと大人と話したい、子どもだと思われたくない」と自分より20も上の小児がんサバイバーが集まる患者会に参加するようになりました。仲間の話は、未来の自分に立ちはだかるミッションに立ち向かうための攻略本のようで、メモを取る手が追いつかないほど革新的でした。でも私の質問に対しては、もうみんな昔すぎて覚えていないみたい。そっか…。
他にも闘病当時お世話になったことから、「CLS(Child Life Specialist)になりたい」という夢があり、その実現のために「病院でボランティアをしたい」と何度も問い合わせました。でも「高校生はダメ」「大きな病気をした方はちょっと…」と言われ続けました。…う〜ん。これもか…。
その時に「実は病院の中が一番守られていて、退院してからもまた別の闘いがある」と気づきました。
ちょうどそのタイミングで、シャイン・オン!キッズのイベントボランティアの募集があり、「どうせまた断られるだろうな」と思いながら応募しました。帰ってきた答えはあっさり『当日についてのご連絡』…あれ?何も言われなかった。
あれよあれよと「小児がんサバイバーのコミュニティイベントをやりたいんです」というお話を聞いて「ここなら本当にやりたい、かつ、すべきことができるかもしれない。やってみよっ!」と大きな期待を抱いた小娘。それが、当たって砕けろ、若かりし頃の17歳の私です。
立ち上げの2017年は、大学生になった年でもありました。『何事も若い時に経験すべし』という両親からの教えを胸に、私が一番やりたかった『10代サバイバーのコミュニティづくり』というテーマに集中し企画に没頭しました。できることといえば『元気にこんにちは!』くらいに何もわからない女子大生は、初めて、あの頃の闘病を仲間と語り合いながら、『生禁(なまきん)ブルース』※を作りました。
※抗がん剤治療の影響で免疫力が落ちると、果物やお刺身、納豆などの加熱していないものは食べてはいけないというルールがありました。『生物(なまもの)禁止』略して『生禁(なまきん)』です。
立ち上げの2017年で『語り合うこと』に大きな意味を感じた私は、その『語り』をもっと生きるために必要な力にできないかと考えました。
それがふりかえりビーズです。シャイン・オン!キッズのビーズ・オブ・カレッジプログラムは入院中が対象ですが、これを退院後の私たちもやってみたいと思い実施しました。当時、大学で保育を学んでいた私は、講義で『人間は一度転んで痛い思いをするから、滑りやすいところではゆっくり歩くことを学ぶ』と聞き、「これは私たちの『小児がんと闘う』こともその『学び』と同じ意味を持つのではないか」と都合よく解釈しました。
これは的中し、参加者のサバイバーは記憶はもちろん、記憶に残っていないところは記録から闘病=頑張りをふりかえることで、新たな仲間との『つながり』と『本当の自分』をビーズと一緒に持ち帰ることができました。
この2年間ファシリテーターを勤め、見つけた大切なことは『語り合うこと』『つながり』『本当の自分』
最初に掲げた『10代サバイバーのコミュニティづくり』というテーマの『10代』からも卒業し、20歳になった2019年からは、新たなリーダーと一緒にキャンプカレッジを運営し、ふりかえりビーズを関西に展開。場所というハードルを超えた、より強い『つながり』を感じました。
私も保育士になるべく、実習や講義はより一層高いものが求められ、研究も進めなければなりません。「今年は無理かな」と思った時もありました。
しかし、周りのリーダーやキャンプカレッジリピーターの仲間から「今、病院にいる仲間や家族、あの時からずっと助けてくれている医療者の方に、私たちのありがとう、一緒に頑張ろうを届けたい」という声が。
その思いが、オリジナルソング『ぼくらはひとつ』を生み、私たちは『ピンチをチャンスに変える力を持っている』ということも発見しました。
私は大学を卒業し、保育士として社会人の一歩を踏み出しました。
とは言っても「CLSになりたい」という14年間変わらない夢を叶えるため、受験生でもあり、何足かの草鞋を履きながら生きています。
今年のキャンプカレッジは、私たちの絵がオリジナルグッズ*になり、『ぼくらはひとつ』をもっと多くの人に届けるために手話が付きました**。
仲間とともにどんどん「やりたい!」が叶い、『やっぱり特別な経験を共有できる仲間っていい!』と再認識した年でもあります。
2017年から5年間、キャンプカレッジで見つけたことは、
『語り合うこと』
『つながり』
『本当の自分』
『ピンチをチャンスに変える力』
『特別な経験を共有できる仲間の大切さ』
この5つです。
特別な経験をしたサバイバーが持つ秘めたる力を、仲間とまた語って見つけたい。
2022年は、仲間とどんな新しいことを見つけられるでしょうか。今からとっても楽しみです。
執印 優莉亜 しゅういん ゆりあ(シャイン・オン!キッズ プログラムコーディネーター、保育士)
0歳で網膜芽細胞腫、8歳で横紋筋肉腫を罹患した小児がんサバイバーであり、2017年から2020年まで 学生スタッフ キャンプカレッジ ファシリテーターを務める
疲れやすさや感覚過敏など、ちょっと困った症状と向き合いながら、小児がんの子どもと家族にとって素敵な未来を実現するために奮闘中!
小児がんサバイバーとそのご家族が自然の中で集まって語り合う”キャンプカレッジ”を開催したい!
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