Photo Life Laboratory ULYSSESの魚住です。
前回は、バックパックを背負って自転車でジムに通うようになった僕が、ちょっとした支払いのたびに財布を出すためバックパックを下ろしたり背負い直したりするのが面倒で、財布やスマホだけを入れられる小さなポーチが欲しくなった…という経緯をお話しました。
バックパッカーズポーチ(BPP)裏話、二回目の今日は、なぜ既存のボディバッグでは駄目だったのかという理由を、「欲しいポーチの条件」と絡めながらお話します。
ありそうで…ない!
前述のように、BPPはもともと「バックパックを背負い、自転車で街を移動するときに使いやすいポーチ」というテーマで構想を練り始めたものです。満たしたい要件は、主に次の3つ。
1.サイズ「極力小さく!」→ 財布・スマホ・キーケースの3つさえ入ればいい
2.運用方法「バックパックと同時に使いたい」→ ただし併用だけでなく、単体でも使えるもの
3.自転車との相性「身体にタイトにフィットさせたい」→ 前傾姿勢でペダリングしても邪魔にならないもの。
ところが、このたった3つが、なかなか「同時に」満たせなかったのです。
小さいサイズのものはたくさんあるけれど…
極力小さいものが欲しかった理由は、バックパックを背負った状態でさらにもう一つボディバッグ的なものを身につける場合、空いているスペースが胸の前しかないから。左右のショルダーストラップの間にスポッと収まるサイズであることが必須条件です。
財布とスマホとキーケースがギリギリ入るような大きさのポーチがあればいいわけですが、これが意外とありそうでありませんでした。
正面から見た大きさがコンパクトなボディバッグは、結構あります。前面投影面積だけ見れば、下の画像のように、一見すると問題なさそうです。
ところが、このタイプのボディバッグを横から見ると、だいたい伝統的にこういう形(↓)をしています。荷物の入り口はそこそこ大きいですが、底の部分にマチがありません。
見た目はスリムでいいのですが、小物を3つ重ねると底面の厚みが足りず入らないか、無理やり入れたとしてもモノの出し入れが非常にやりにくくなります。
さらに近年では、スマホのサイズが巨大化したので、「コロンと小さいだけのポーチ」では、大きいタイプのスマホが入らないという問題も出てきました。
チェストバッグじゃ駄目なの?
バックパックが、デイリーユースからビジネスシーンまで幅広く使われるようになって以降、「スマホや財布をすぐ取り出せる位置に分けて持ち歩きたい」というニーズはあちこちで生まれ、バックパックのショルダーストラップに取り付けるタイプのサブバッグやポーチ…いわゆるチェストバッグが現れました。
このタイプのバッグやポーチが、僕のストライクゾーンから外れた理由は、次の2つです。 ひとつは、見た目の「ギークな感じ」や「ガジェットフリーク感」が否めないこと。僕自身、そういうテイストが嫌いではないのですが、反面、服やシチュエーションを選んでしまうというコーディネートの難しさを感じてもいました。
もうひとつは、単体での運用にスムーズに移行できないところ。
例えば旅行や出張で目的地のホテルに着いたときに、さっとバックパックを下ろし、胸にボディバッグだけ残して散策に出る…というような柔軟な運用が、バックパックにジョイントされているタイプではできません。
あくまでも単体での運用が可能で、かつ「バックパックのオマケ感」がなく、それひとつでファッションとして成立するものが欲しかったのです。
ストラップが伸縮して欲しい
自転車に乗りながらボディバッグを単体で使う場合は、走行中、バッグは背中に回しておきたいところですが、クロスバイクやロードバイクの乗車姿勢は前かがみなので、しっかり身体に締め付けておかないと、だんだん前側に回ってきてしまい邪魔になります。
一方で、バッグを身に着けたり外したりするときには、ストラップは大きく緩んでいる方がやりやすいです。また、その日のファッションによっては、ゆったり長めにセッティングしたいこともあるでしょう。
つまり、ショルダーストラップは用途に応じて一瞬で好きな長さに変えられることが望ましかったのですが、この点を満たしているボディバッグは非常に少なく、しかも超小型なもので…となると、ほぼ選択肢がありませんでした。
無いなら作るしかないよね?
以上のように、一つ一つの条件ですらなかなか探すのに苦労するのに、3つすべての条件を兼ね備えているものとなると、見つけることが出来ませんでした。
そこで、この「一見ありそうで実はどこにもないボディバッグ」を、自分たちで作れないだろうか?と思い始めたのですが、ひとつだけ問題がありました。素材の選定です。 僕が代表を務めるブランド「ユリシーズ」は、長年、レザーや帆布などナチュラルな素材を使ったものづくりを得意としてきました。
が、いま欲しいと思っているボディバッグは、季節や天候やファッションを選ばず使えるもの。 つまり、突然の通り雨や、炎天下でシャツをぐっしょり濡らす汗なども気にならないタフな仕様が望ましいわけです。
そうなると、撥水性や耐候性のある素材が欲しくなります。しかし、バリスティックやコーデュラと言ったアウトドア系定番のナイロン素材は、もはや世の中にありふれているし、「ギーク感を減らしたい」というコンセプトにも今ひとつ合わないように感じました。
シチュエーションに左右されず、安っぽくもなく、軽くて丈夫。そんな都合の良い素材なんてあるのか? そう思っていた時に、ひょんなことから、クラレさんと出会ったのです。
(つづく)