Photo Life Laboratory ULYSSESの魚住です。
前回は、当初ひたすら縦型で模索してきたCHESPOCKのデザインを、いったん白紙に戻したところまでお話ししました。今回はその続きから。
深さは浅いほどいい
縦型で検討していたときにはうまく実現できなかったことのひとつに「中身への快適なアクセス」があります。 中身をひと目で見渡せるか。
スムーズに出し入れできるか。 小さなものが迷子にならないか。
縦型では、こういったことのひとつひとつにイマイチ感があったわけですが、これはひとえに「深さがあること」が原因でした。
詰まるところ、同じ容積の袋を横倒しにすれば、ただそれだけで、これらの問題が一気に解決します。袋が浅くなるからです。上げ底や余計なポケットの増設などをせずとも、見やすく・出し入れしやすくなり、コスト0円で改善できます。
解決法は単純なほどいいので、今後は横型で仕様を練り直すことにしました。
小さくするためには奥行きがいる
さて、最初に縦型から検討したのは、バックパックと併用する際、縦長の形状の方がショルダーストラップの間に収まりやすいと判断したからでした
なので横型に変更する場合は、可能な限り横幅を狭く抑えたいところです。
必要な内寸は「iPhone11 Pro MAXの長辺」と答えが出ていますので、それ以上は1cmたりとも大きくしたくはありませんでした。
入れ物の構造を考える際、気室(物を入れる部屋)の作り方は大きく二通りあります。
ひとつは、「マチは作らず、柔らかく薄い素材を使うことで内容量に合わせて柔軟に変形させるタイプ」。
もうひとつは「マチをしっかり設け、想定する最大容積を常に確保するタイプ」です。 前者は、例えばサコッシュが該当します。何も入れていない時は真っ平らの袋ですが、物を入れるほどに中から押されて膨らんで、両サイドには擬似的なマチができます。
この「マチになってくれる部分」は、もともとサコッシュの前面および背面の生地なので、ある程度の量の荷物を入れるつもりであれば、入れたいものの横幅よりもさらに大きめの幅が必要になります。
普段はスリムに見せたい、でも必要な時には膨らんでくれて結構入る…そんなコンセプトにはぴったりですが、今回のように横幅が限定されている場合には向きません。
そこでバックパッカーズポーチでは、後者の「しっかりマチがあるタイプ」で行くことにしました。
この方法だと、正面から見たときの投影面積が小さくて済むだけでなく、常に一定の空間か確保されていることで、物の出し入れがしやすく一覧性も高いというメリットがあります。
スマホって大事だよね?
ところで、もともとこのポーチは、「バックパックの中から財布・スマホ・キーケースの3つを避難させたい」というコンセプトで作られることになりましたが、その中でも最も重要度が高いものは何か?と開発メンバーで考えた時、おそらくスマホではないかという話になりました。 そこで、縦型の時に考えていた「1気室のなかに小分けのポケットを作り、3つの物を詰め込む」という考え方をやめ、「スマホの部屋とそれ以外の部屋」に分けることにしました。
こうすることで、スマホの出し入れがとても直感的になり、出し入れの際に他のものを指先でかき分けたり、1つのものを取り出すためにすべてのものを晒す必要がなくなりました。
この「スマホ別室構造」が決まったことで、試作が大きく前に進みはじめます。 ここまで、試作は張りのある芯材のようなもので作ってきましたが、いよいよ表面素材としてクラリーノを使用するフェーズに入りました。
手触りや厚み、張り感、色、機能性など、どんな仕様にするのかを煮詰めようとしたのですが… これがまた、一筋縄ではいかなかったのでした。 (続く)