Photo Life Laboratory ULYSSESの魚住です。
フォローしてくださっている皆さま、いつもありがとうございます。
さて、第8話となる今日は、「結局、チェスポックで何を達成したかったのか?」という少し本質的なテーマについて、つらつらと書いてみます。
ボディバッグは成熟している、のか?
僕がいちばん最初にチェスポックのコンセプトを開発メンバーに披露した時、全員が思ったこと。それは 「なるほどつまり…これってどこから見ても、普通のボディバッグだよね」 というものでした。
ボディバッグは、ヒップバッグやウエストポーチから始まり、何十年もかけて進化してきた道具です。それ故、既にあらかた完成されていて、大きなイノベーションが起こる余地はそれほど残っていません。
実際、最初のラフ案には既視感しかありませんでした(笑)。
しかし、それでもあえて自分たちでボディバッグというものを再定義してみた結果、こんなに小さくて単純そうに見えるものが、本気で向き合うほどに、実はとても考え甲斐のある奥の深いツールだということを思い知ります。
「小型化」と「内容量の確保」という真逆のテーマを両立させつつ、デザイン性を損なわずに使い勝手も突き詰めるという強欲なアプローチは、非常にエキサイティングでした。 装飾的な要素を排し、ホスピタリティの過剰と必要とを注意深くより分けて限界までパーツ点数を減らし、使い心地にステータスを全振りした結果、チェスポックはとてもシンプルな道具になりました。
ではチェスポックは、今風のミニマリズム的な何かになったのでしょうか?
もともと、必要最小限のもの(例えば財布・スマホ・キーケース)だけ持ち歩ければいいという割り切りで生み出されたボディバッグなので、そこだけをとらえると、確かにミニマルです。
その一方で、今までバックパックひとつにまとまっていた荷物をわざわざ2つに分けるのですから、持ち物は減らず、むしろボディバッグひとつぶん増えてしまうことになります。
つまり、チェスポックの設計思想の底に流れているものは、ミニマリズムではありません。
「一つの箱にすべてを詰め込む」という方法は、見た目はシンプルだが、運用は必ずしもシンプルではない。
物を減らすのではなく、分ける
ファッション界隈でよく聞くフレーズに「バッグ難民」というものがあります。
いつも「これこそは自分が探し求めていたバッグだ!」と思って買うのに、しばらくするとアラが目立ってきて、次のバッグを探し求めてしまう、そんな人たちのこと。他でもない、僕自身もバッグ難民の一人です。
ジム通いを始めた当初、あれほどよく吟味して購入し、気に入っていたはずのノースフェイスのバックパック「access pack 2」。
しかし、道中に何度も発生する「降ろす→中の物を取り出す→しまう→背負い直す」という動作の多さに疲れてしまい、一時的に愛着の度合いが下がりました。
が、そこで新たなバックパックを探すのではなく、チェスポックを使い使用頻度という切り口で持ち物を二つに分けたことで、access pack 2は出し入れが面倒だという弱点が解消され、長所だけが際立つようになり、前以上に愛着が深まりました。
チェスポックは、「好きなものの価値を高める」という効果を発揮したことになります。
最も必要かつ最小限なもの(Unit A)と、それ以外のもの(Unit B)に分けると、暮らし方がフレキシブルになる。
ユリシーズでは、「ひとつひとつ丁寧に吟味して手に入れたものには、機能とは別の価値がある」と考えています。
なぜなら、自分にフィットするものには、気分を高揚させる力があるからです。
であるならば、そういうモノたちは、折りに触れ目にし、手にすることが重要になります。 お気に入りのモノは無闇に断捨離するのではなく、大切に使いながら、小さく分けて持つ。そしてそれらを、TPOに合わせて組み合わせる。 これが、ユリシーズの考える「ちょっとだけ気分が上がる、心地よい暮らし」です。
なので、チェスポックに、その日なにを小分けして持ち歩くか、どのバッグと組み合わせて使うかは、一人一人のひらめきや価値観に委ねられる余白を残してあります。
チェスポックが、皆様の気持ちにフィットする快適な「小分けライフ」に貢献できれば幸いです。
次回は、具体的に何を入れたら楽しいか?実際に使ってもらったモニターさんたちの意見も交えながら考えてみたいと思います。