攻殻機動隊では人工知能が大きな役割を占めている。ここでは現在の人工知能の研究がどこまで来ているのか、攻殻機動隊の2029年にはどこまで進むと期待されるのか。
人工知能は、人間のような知能をコンピュータに持たせることを目指して、あるいはコンピュータを道具として知能を探求することを目指して、1950年代に研究が始まった。当初はコンピュータに対する根拠のない過大な期待があってブームになった。いまのディープラーニングの原型であるパーセプトロンもこの時期に開発された。しかし結果として期待外れで人工知能は冬の時代を迎えた。1970年代に人間の専門家を模倣したエキスパートシステムが医療の分野などで優れた能力を示し、1980年代に人工知能は2度目のブームを迎えた。この時期にパーセプトロンの拡張であるニューラルネットワークが開催された。しかしエキスパートステムも実用にならないことがわかって1990年代には再び 冬の時代を迎えた。2000年代にニューラルネットワークの拡張であるディープラーニングが開発されて非常に高い能力を示すことがわかって2010年代に人工知能は3度目のブームを迎えている。
今から2029年に向けて人工知能はどうなるのかを、フチコマ/タチコマは実現するのか、人工知能がゴーストを獲得することはできないのか。
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松原仁
公立はこだて未来大学システム情報科学部複雑系知能学科教授
1959年東京生まれ。1981年東大理学部情報科学科卒業。1986年同大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了。同年通産省工業技術院電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)入所。1993-1994年スタンフォード大学言語情報研究センター客員研究員。2000年公立はこだて未来大学教授。人工知能、ゲーム情報学、エンタテインメントコンピューティング、観光情報学などに興味を持つ。著書(共著を含む)に「鉄腕アトムは実現できるか」、「コンピュータ将棋の進歩」、「ロボットの情報学」、「先を読む頭脳」、「一人称研究のすすめ」、「観光情報学入門」など。人工知能学会会長、情報処理学会理事、観光情報学会理事など。