私は『攻殻機動隊』に登場する京レの「熱光学迷彩」モチーフとして、背景が透けて見える「光学迷彩」を開発し、米『TIME』誌でCoolest Inventions of the Yearに選定されたことがあります。私自身はフィクション作品に日々刺激を受けながら研究を続けています。日本でも大ヒットした映画『ベイマックス』のエンドクレジットに、日本のロボット研究者の名前があることをご存じでしょうか。『ベイマックス』というフィクション作品は最先端のロボット研究をリサーチした上でつくられています。
エンジニアリングは文化の一形態であり、一方フィクションは未来の記憶であり、研究とはその記憶を辿る過程なのかもしれません。フィクション作品と工学技術は、相互に刺激をし合って存在するものだと考えています。本講義では、フィクションとテクノロジーの相互作用の面白さを伝え、私の研究テーマである人間の身体の拡張とその未来像を議論したいと思います。
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稲見昌彦
東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻教授
1999年 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)東京大学助手、電気通信大学教授、MITコンピューター科学・人工知能研究所客員科学者、慶應義塾大学教授等を経て2015年11月より現職。自在化技術、Augmented Human、エンタテインメント工学に興味を持つ。米TIME誌Coolest Invention of the Year、文部科学大臣表彰若手科学者賞、情報処理学会長尾真記念特別賞などを受賞。超人スポーツを提唱。超人スポーツ協会共同代表。