クラウドファンディング開始から半月ちょっとが過ぎ、現在の支援総額は約130万円、支援人数は140名となりました。
そしてご協力いただいた方々からのメッセージも120を超えています。
もちろんそのひとつひとつ、読ませていただいていますが、あらためて「MOTO NAVI」をはじめとする我われの雑誌がみなさんから愛され、そして今回の僕じしんの夢に対してこれほど多くのみなさんが共感し、応援してくださっているということを感じ、本当に、心から、喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。
みなさんへのお返しは、もちろんよい本をつくることに他なりませんが、日々寄せられるご協力とメッセージに、一言お礼を申し上げたくなり、この活動報告投稿を通じて、感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。
そして先日、4月24日に発売したMOTO NAVI最新号のコラム「VOICE from Editor」に、あらためて創刊15周年を迎えたいまの気持ちを書きましたので、ちょっと長いですが、ここにもそれを掲載したいと思います。
いまの気持ちです。よかったら読んでください。
そして引き続き、応援、ご支援、よろしくお願いします!
(以下、MOTO NAVI 2016年6月号より)
Voice from Editor
僕たちの未来へ
間もなく一冊の〆切を終えようかという時に、このコラムに向き合う。僕はそんな時間が好きだ。
一冊の雑誌とは、表紙から最終ページへと続く、一遍のストーリーだ。それは映画やドラマのようでもある。良い雑誌は読者の気持ちを惹きつけ、いざない、そして読み終えた後、心に何かを残す。
このコラムは雑誌の巻頭言なのだが、僕はいつも最後に書く。一冊の中に起承転結を描き、その最後に打つ句点のようなものかもしれない。自分はこの一冊で何を伝えたかったのか、そんなことを考えながら、こうして徒然に書き綴っている。
この「VOICE」を書き始めたのは、2001年に出版したモトナビ創刊2号目だ。以来15年間、そのときどきに思ったり考えたりしたことを書き続けてきた。言わば僕にとって、編集者として過ごしてきた日々の記録のようなものだ。
思えばモトナビの15年は、決して順風満帆ではなかった。「もうやめるか?」と問われたことも一度や二度ではない。じっさい一度は休刊の憂き目を見ている。
それでも立ち上がり、これまで続けてきたのは、この雑誌を愛してくれる人々に助けられ、そして諦めなかったからだ。この雑誌に掲げてきた「もういちど」という言葉は、いつしか自分やへのエールになっていたのだと思う。
だが、決して長く続けようと思って始めた訳ではなかった。若いころ夢中になり、そして大人になってあらためて付き合い始めたオートバイという乗り物の魅力を、雑誌を通じて伝えることはできないか、きっかけは単純な思いだった。
バイクを速く走らせたり、メカニズムに強かったり、古いモデルに詳しかったり。そういう趣味人として誇れるものが、残念ながら僕にはなかった。そんな自分なりにオートバイとの付き合い方を考え、表現することがモトナビのテーマとなった。
しばしば「ライフスタイル」という格好つけた言い方をしてきたのは、そうとしか言いようがなかったからだ。“オートバイと暮らす”ということを、僕は提案してきたからだ。
モトナビを作り続けるうちに、わかってきたことがある。僕らがフォーカスしたいのは、オートバイそのものではなく、それに「乗る人」なのだと。それは僕を編集者として育ててくれた、自動車雑誌『NAVI』から受け継いだ精神なのかもしれない。
雑誌作りを通じて、僕らはたくさんのバイク乗りと出会った。有名な人もいれば、そうでない人もいた。だがオートバイという乗り物を前にすると、誰もがフラットに付き合うことができた。それはオートバイの持つ不思議なチカラなのだと、数多のライダーに出会ってきたからこそ、そう思わされる。
オートバイに乗って、死んでいった仲間もいた。一人や二人ではない。オートバイはときにリスキーな乗り物なのだと、認めざるを得なかった。
だがオートバイを恨んだり、降りようと思ったことはない。死んでいった奴もそうだと、僕は信じる。
もちろんオートバイで死んではならない。悲しい事故が少しでも減るよう務めなくてはならない。そうやってオートバイを取り巻く環境を変えていくためにも、僕らは乗り続け
ていくのだと。そしてこの15年、オートバイ以上に、雑誌を取り巻く環境も大きく変わった。むろんインターネットの普及によるものだ。雑誌にかぎらず“マスメディア”はいま、大きなターニングポイントを迎えている。
もはや世の中の「情報」の元栓を握るのはメディアでない。誰もが瞬時に世界中から、あらゆる情報にアクセスできるのだから。
いまメディアに求められるのは溢れかえる情報を取捨し、道すじを指し示すナビゲーターであることではないか、と僕は思う。
ではメディアの中でもひときわアナログなカテゴリーに属する雑誌に、果たして未来はあるのだろうか?
もちろん僕は、雑誌の未来を信じている。いい写真と文章をもって、読み手にメッセージを伝える。それは雑誌にこそできることだと思う。
いっぽう単なる情報誌に甘んじるのであれば、雑誌は早晩ウェブに置き換えられ、消えてしまうだろう。
時代はこれからいっそうスピードを上げて変化していく。だからこそ頑なにならず、しなやかに、柔軟な存在でありたい。たとえこの先、どんなに厳しい局面が訪れたとしても、“もういちど”の気持ちを持てば、きっと乗り越えていけるはずだ。
モトナビを楽しみにしてくれる、読者や仲間がいる限り。そして僕らをつないでくれる、オートバイという素晴らしい乗り物がある限り。
創刊から15年、人生で言えば義務教育を終えたモトナビは、これからその花を咲かせるときだ。
オートバイの未来を、雑誌の未来を、僕は信じている。