10月17日、マドリードで堀越千秋から1冊の本を手渡されました。それは、フリーダ・カーロの遺書ともいえる画集でした。カーロが病の床で絵を描く写真、そして彼女の絵入りの日記、手紙の類がおさめられていました。
「この本、気に入っているんだよ」
「まかしてよ。もっと凄いの作るから」と僕が言うと、堀越がニコッと笑ってVサインをしたのです。あの日からまだ、3週間ほどしか経っていません。
2メートル四方を超える堀越千秋の大作(複数)を地方から東京のスタジオに運ぶため、昨日(11月11日)、ヤマト運輸に見積もりを取りました。作業費用込みで片道50万という返事でした。うーん、困りました。スタジオにあるカメラは1台700万もする大型のデジタルカメラ。その解像度はすごいのですが、ただ、このカメラを外に持ち出すわけにはいきません。最高の画集を作るのには費用がかかります。資金はいくらあっても足りません。
いつもそうですが、編集が佳境に入ると、僕は夢の中でアイデアを練っていることがよくあります。そこに時々、堀越が現れます。「大勢の人が支援してくれてるよ」「撮影順調、いい画集できるぞ」と彼に言うと、夢の中の堀越が、こんどはちょっと照れ臭そうに笑っていました。
「編集日誌より」(大原)