みなさま
目標額の40%に到達いたしました!
これまでのご支援ありがとうございます。
今回のご報告では、「OLDnews」が目指す場所についてお話させてください。
2010年3月。
大学を卒業してから僕は長いこと無職でした。
いまなら怠惰な自分を叱責できますが、当時はとにかく働くことが怖かった。
とりあえず海外に行ってみたり、あてもなく一日中歩いてみたり、働くことから逃げたかった。働くことはすなわち自分の天井を突き付けられることだと錯覚していました。
4月は残酷な季節でした。
若さが芽吹き、大人になりゆく同級生の姿を横目に、僕はひたすら自分の影に怯え、作り上げた孤独な夜を過ごしていました。
週末がやってくるたびに、スポーツやユーモアで勝ち得た学生時代の尊厳が失われような気がして、友人と遊びに出掛けても、「ところでお前は働かないの?」と言われまいと一方的にしゃべり続けていました。
当時の僕は、心の底から運命の二文字を信じていました。
唐突に「お告げ」が下り、輝かしい未来が切り開かれることを信じていました。小説、雑誌、映画や音楽にお告げがあるに違いないとひたすらに探していました。
……残念ながら、当時の僕を救ってくれるお告げは見つかりませんでした。空っぽになった通帳を手にして、僕は泣く泣くネクタイを締めました。
今なら分かりますが、僕は自分と似た誰かに話を聞いて欲しかっただけだった。誰かに僕のことを分かって欲しかった。ただそれだけでした。
「言いたいことはよく分かるよ」
その一言だけが欲しかった。
そのあとにどんなに辛辣な言葉が続いたとしても、その一言だけが欲しかった。ただただ「僕の話」を聞いて欲しかった。他の誰でもない僕の話。きっとその一言さえあれば、当時の僕は頑張れた。
「大人」になった僕は、いつしかこんな思いを少しでも解消できる場所を作りたいと思うようになりました。
わがままで子供じみた感情ですが、「分かるよ」その一言を言ってくれる場所さえあれば、救われる人はたくさんいるんじゃないか、と。
お告げを待つ当時の僕は、「誰か」の半生を読むたびにこんな風に思っていました。
「ああ、この人、自分に似ているなあ。この人なら俺の気持ちを理解してくれる」
……そんなわけで、OLDnewsの人物の取材記事に、こんな問い合わせ先を作りました。
二次元コードを読み取るだけで、企画に登場した人物へのメールが送れます。
もちろん、メールはいったん編集部に届くので、取材者さんへの誹謗中傷の心配はありません。当時の僕に似た方にこの投稿を見つけて欲しい。
イギリスにこんなジョークがあります。
「あなたには運命の人が二人います。一人はゆりかごに。もう一人は墓場に」
運命の人なんかいないのかもしれない。突如として輝かしい未来を見せてくれる人なんかいないのかもしれない。
それでも、話を聞いてくれる誰かがいるだけで少なからず前を向ける人は必ずいると僕は思う。自分が信じた人に話を聞いてもらえるだけで、救われる人はきっといる。
誰かに話せて気分がすっきりしたら、自分を変える何かができる。そんな場所を僕は作りたい。
誰でも気軽に参加できるコミュニティ。OLDnewsをそんな場所にしていきたい。