皆さんの好きな日本酒は、「誰が」造ったお酒でしょうか??
いきなりこんなことを訊かれると、驚かれる方もいらっしゃるかも知れません。
日本酒の「銘柄名」は、一般的に「蔵(会社、場所)」と一致しています。つまり「どこで造られたか」は銘柄名を見ればわかります。
一方で、「どこで造られたか」と同じくらい重要な「誰が造ったか」を記した日本酒は、実はそう多くありません。
では、そもそも「誰が」造ったか、という情報はどの程度有効なのでしょうか??
今は少しずつ変わってきましたが、実は元々日本酒は杜氏組合から派遣される「杜氏」さんがお酒の中身の全責任を負うという仕組みになっています。もちろん蔵によって設備が異なるため「全く同じ味」にはならないまでも、「味」に関する多くの部分は杜氏さんの技術や哲学に拠るものです。
また、杜氏さんは技術統括だけでなく、実際のスタッフである「蔵人」さんも、杜氏さんが地元で採用し、一緒に蔵入りすることが多いです。
これは今風の会社で例えて言うなら、「会社の社長さん(CEO)=蔵元(銘柄)」、「会社の技術者のトップやCTO=杜氏さん」なのです。
そして実は杜氏さんは、一つの蔵元に留まり続けることもあれば、数年に一度別の蔵元に移籍することがあります。
しかも技術畑を担う一般スタッフも杜氏さんが蔵に連れてきて、杜氏さんの移籍と共に蔵を移ることも多いため、会社で言うと杜氏さんが変わると技術スタッフ含めた部門ごと移籍するようなものです。
そうすると、元々A酒造にいた杜氏さんがB酒造に移ると、B酒造の酒が今までのA酒造のお酒の味にきわめて近くなる、ということが起こるのです。
上記は伝統的な杜氏制の話ですが、最近増えてきた「蔵元杜氏制」の場合でも考え方はおおよそ似ています。蔵元杜氏制の場合、蔵元さん(CEO)と杜氏さん(CTO)は一致していますが、代替わりの際に杜氏が変わるのには間違いないため、同じ銘柄でも月日が経って代替わりすると味の方向性が大きく変わることもあります。
つまり、お酒を選ぶ際には、銘柄(蔵元)の情報だけでなく、「杜氏さんが誰か」というのが大きな要素なのです。
これらを踏まえ、まず私たちは「杜氏さんの名前」を全面に打ち出すお酒を造りたいと考えました。
特に私たちが注目したのは、未来の酒造りを担う、新世代の杜氏さんです。
皆さん杜氏さんというと60代や70代の大ベテランを想像することも多いかと思います。でも実は、最近20代や30代の杜氏さんが多く出てきています。しかも男性だけでなく女性杜氏さんが活躍する事例も増えてきています。
そこで、これらの杜氏さんは、若いながらも日本酒を醸造する蔵人の最高責任者であり、その蔵のコンセプトを左右する匠であり、酒造りに並々ならぬプライド、ポリシーを持っています。
今回、そのような新世代の杜氏さんと議論を重ね、本プロジェクトでは「その杜氏さんが1年で最もチャレンジした(現時点での)最高峰のお酒」を造り、シリーズ化することにしました。
将来の「スター」杜氏さんの、「最高峰の更に上空に輝く」お酒。スペックも、最高の「純米大吟醸」酒に限定してラインナップします。
これらの意味を込めた”Stars”というシリーズのお酒を皆さんにお届けしたいと思います。
また、Stars参加の杜氏さんの個性は、まさに十人十色です。その為、Starsシリーズ内においては「色」で杜氏さんを表現させて頂こうと思います。
それではこれから、Starsプロジェクト参加蔵元をご紹介します。
吉田泰之氏(吉田酒造 次期蔵元兼杜氏)
Starsの1人目は、酒造りと経営の双方を修行しながら行う「若き総合プロデューサー」吉田泰之氏です。
吉田氏は東京農業大学で醸造学を専攻後、山形県の銘醸蔵の出羽桜酒造で修業、現在は吉田酒造(銘柄:手取川、吉田蔵)で酒造りに取り組む一方、次期社長として営業活動まで幅広く活動しています。
修業時代はイギリスに留学し、「世界から日本を見る」というこれからの日本酒業界に必要な能力を養いました。また小さいころから蔵を継ぐことに迷いはなく、お酒全体のレベルアップ・ブランディングのために日々邁進しています。
全て手作りという、職人たちによる伝統的な酒造りを特徴とする吉田酒造において、新しい時代に相応しい若さとパワーで、国境を越えて海外の人たちにも日本酒のすばらしさを発信する“一歩進んだ酒造り”の実現を目指しています。
直近では”The Birth of Sake”という吉田酒造の酒造りを追ったアメリカの映画でも主役級として取り上げられ、映画もトライベッカ国際映画祭で受賞するなど、日本酒界に留まらない活躍をしています。
http://www.tedorigawa.com/products/cat35/
「いざやり出したら、この業界でトップに立ちたいと思うようになりました。」高い志と実力を持つStarです。
得意なのは能登杜氏の特徴である「芳醇旨口」に新しい感覚を加えた新スタイル。リンゴや梨のような爽やかな酸味と優しい甘味を感じる「爽やかだけれど決して軽すぎず、余韻まで楽しめる」お酒。
吉田氏の醸すお酒は、実家の銘酒「手取川」の川のイメージと、本人の冷静沈着でクールなイメージを踏まえ、”Stars Blue”と命名します。
浅野理可氏(一宮酒造次期蔵元兼杜氏)
続いて、島根県大田市で「石見銀山」を醸す一宮酒造蔵元の次女(三姉妹)として東京農業大学で最先端の酒造方法を学んだ後、蔵に戻って修行を続けている若き女性杜氏浅野理可氏です。
浅野氏の蔵では、伝統的な日本酒造りに加えて、日本酒ファン層の拡大を目指して、一般の清酒よりアルコール度数を低く抑え、飲みやすさを追求した発泡清酒の浸透なども図っています。例えば、度数低めの日本酒に薔薇の花弁を漬け込んだ「薔薇姫」は、キレイになるお酒としても注目を浴びています。また、若い個性でSNSなどを用いた新しい宣伝方法を模索しており、小さい蔵の中で、地域の農家や他の蔵と協力しながら「何かあったときにふっと思い出してもらえるような」充実した酒造りを目指します。
年上の男性ばかりの蔵の中で時には失敗をしながらも、昨今の日本酒離れから実家の酒蔵の味を守るために日々修行中。積極的にメディアに進出し、NHKなどにも取り上げられました。「私みたいな人間がいるんだっていうことを一人でも多くの方に知ってもらいたい。」そうした職人としての気概を持った今注目の杜氏さんです。
浅野氏の得意なお酒は、フルボディの旨口タイプ。浅野氏のキャラクターから感じられる華やかなイメージだけでなく、米の旨味と甘みがしっかり詰まった。濃厚かつ本格派のお酒です。
紅一点の浅野氏の華やかなイメージと味が濃く明快な酒のテイストを踏まえ、浅野氏の醸すお酒は”Stars Pink”と命名します。
阿部裕太氏(阿部酒造次期蔵元兼杜氏)
新潟阿部酒造の若き6代目。酒造りを始めたのは僅か2年前です。淡麗辛口を基本とする新潟において、その良さを残しながら米の風味をしっかり味わえる旨口タイプの「あべ」レーベルなど、新しい酒造りに挑戦しています。
阿部氏は先代である父と一緒に酒造りを行っており、尊敬すべき先輩であると同時に一番身近なライバルとして、日々切磋琢磨しながらお互いの酒を高め合っています。
「今までの日本酒業界のイメージは外から見ると、もしかしたら「農家さん」の域を出ていないのではないか。ただ物を作ってそこで終わり。売り方も知らないし、そもそも美味しいものを造っているという誇りがあるから、自分でPRする必要がないと考えてしまってはいないか。」と常に自らを客観視するとともに、危機感を抱きながら挑戦を続けてきました。日本酒の世界に留まることなく、グローバルに愛されるワインのブランディングに注目し、ともすれば「オヤジっぽい」イメージが先行する日本酒を、ボトルのデザインや形状の見せ方など、消費者の購買欲を駆り立てる新しい手法で売り出せるよう努力しています。
次世代の蔵として、今後は貴醸酒やスパークリングなどにも挑戦し、「レストランの食前から食後まで、全て自分のお酒で完結できる酒造り」を目標とする情熱的な蔵人です。
阿部氏の得意なお酒は、「淡麗辛口王国」新潟のイメージを覆す、米の旨味・甘みが強いタイプのお酒。どっしりとしたインパクトと綺麗な酸が特徴のお酒です。
そんなパッション溢れる阿部氏が醸すお酒は、”Stars Red”と命名します。
杜氏さん、しかも若き将来のスター杜氏のその中でも極上の純米大吟醸を造るプロジェクト!是非皆さん応援のほど、宜しくお願いいたします。