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若いLGBTの声を元に書かれた
スペインのゲイ小説「ぼくを燃やす炎」を翻訳出版したい!

スペイン大使館経済商務部 金関あささんが語る『スペインのLGBT事情と、その文学性』

こんにちは、サウザンブックス「PRIDE叢書」編集部です。このたびは『ぼくを燃やす炎(仮)』プロジェクトをご支援いただき、誠にありがとうございます!

プロジェクト準備段階からご協力いただいています、スペイン大使館経済商務部 金関あささんに、スペインのLGBT事情とその文学性についてお話しを伺いました。インタビューでは、スペインの同性婚率は全体の2%ほど、などの興味深いお話しも。

ぜひとも、周囲の方にも本インタビューをご紹介いただき、そして、このクラウドファンディングのご参加につながりますよう、お力添えのほど引き続き宜しくお願い致します。

プロジェクト終了まで残り2ヶ月弱、頑張って参ります!


 

 サウザンブックスが『El fuego en el que ardo(ぼくを燃やす炎・仮)』という本の存在を知るきっかけになったのが、スペイン大使館が主催している“ニュー・スパニッシュ・ブックス”の選考会だ。選考会を担当しているスペイン大使館経済商務部の金関あささんに、選考会のこと、スペインのLGBT事情、そして近年のスペイン文学の傾向についてはなしをうかがった。

 

―― “ニュー・スパニッシュ・ブックス” について教えてください。

“ニュー・スパニッシュ・ブックス”はスペインの最新出版物を他国に紹介するプロジェクトです。現在は、日本、英国、ドイツ、フランス、アメリカの5国で実施しています。日本を例に説明すると、スペインの出版社からの自薦で、日本に版権を売りたいスペインの書籍が集められてきます。フィクション、ノンフィクション、子ども向けの絵本から、レシピ本のような実用書まで、ジャンルは問いません。そうして集められた中から、日本の選考委員たちが「日本の市場に向けたおすすめの本」を選びます。選ばれた本はレポートとともに“ニュー・スパニッシュ・ブックス”のサイトで紹介され、同時に、日本の出版社やスペイン語圏文学や文化に携わる方たちにお集まりいただくサイトオープン記念レセプションでも紹介されます。

日本で“ニュー・スパニッシュ・ブックス”がはじまった2011年から、いままでの間に、24タイトルものニュー・スパニュッシュ・ブックスの本が日本語に訳されて出版されています。いちばん最初は、スペインらしい1冊で『サグラダ・ファミリア ガウディとの対話』(原書房)。この頃は、“ニュー・スパニッシュ・ブックス”に対して、出版社もスペインならではのコンテンツを求める傾向が強かったのかもしれません。ほかに『サンティアゴ巡礼の歴史』(原書房)や、レアル・マドリードでも監督として活躍したジョゼ・モウリーニョについての『モウリーニョの哲学』(ソフトバック・クリエイティブ)といった本が刊行されています。

回を重ねるにしたがって、よりグローバルなコンテンツの版権が売れるようになり、普遍的に通用する自己啓発書や、絵本なども出版されるようになりました。最近ではキルメン・ウリベ著『ムシェ 小さな英雄の物語』(白水社)が金子奈美さんの訳で第2回日本翻訳大賞を受賞しています。キルメン・ウリベはバスク自治州の生まれで、『ムシェ』はバスク語で書かれた2作目の小説作品です。バスク語はスペイン語をはじめとする、周囲のヨーロッパ言語とはまるで違う不思議な言語です。バスク語で書かれた本がバスク語を話さないスペイン人のあいだでヒットすることは珍しいのですが、『ムシェ』はベストセラーとなり、スペイン語訳もよく売れました。

また、昨年出版されたアントニオ・G・イトゥルベの『アウシュヴィッツの図書係』(小原京子訳、集英社)はすでに、7刷になっています。こうして、“ニュー・スパニッシュ・ブックス”から良質で挑戦的なタイトルが出版されてきています。そういう意味では、今回、サウザンブックスが刊行を目指している『El fuego en el que ardo(ぼくを燃やす炎・仮)』も、新しいタイプの作品ですね。

 

――『El fuego en el que ardo(ぼくを燃やす炎・仮)』のような作品はスペインでも珍しいのでしょうか? スペインのLGBTを取り巻く環境はどういう状況ですか?

法制度の面においては、スペインは同性婚を認めるのがはやかったんです。2005年に正式に公布され、これはオランダ、ベルギーに次いで世界で3番目でした。スペインはカトリック教徒が多い国なので、強い反対もありました。

2005年に認められてから、同性婚の件数は増加傾向で、現在は全体の結婚件数の約2パーセントが同性婚です。100組に2組ですね。女性同士よりも男性同士の結婚件数のほうが多いです。マドリッドやバルセロナといった都会では、LGBTや同性のカップルに対する偏見も少なく、皆が普通に日常を謳歌している印象です。ただ、マドリッドやバルセロナといった都会はかなり例外的かもしれません。日本にも似たようなところがあるかもしれませんが、まだまだ地域社会が根強い田舎では、LGBTは肩身が狭いということがあるようです。男性はマッチョな父性が尊ばれてきて、その文化がいまも根ざしています。

『El fuego en el que ardo(ぼくを燃やす炎・仮)』もまさに、スペインの田舎町が舞台でしたね。強く暴力的なお父さんが、主人公に“男らしさ”を求め、同性愛者であることがばれた主人公はひどい目に遭わされました。ああいう描写は、非常にリアルなスペインの一面だと感じます。出版社は強い志で、『El fuego en el que ardo(ぼくを燃やす炎・仮)』を出したのではないでしょうか。スペインでも、LGBTの少年たちの恋愛小説はまだまだ珍しいと思います。だから、こうした矜持がある本が、日本に持ち込まれ、それが選ばれて、出版のチャンスを得たのは素晴らしいことです。この挑戦的な1冊が、どうか刊行されることを願ってやみません。この本を刊行するためのクラウドファンディングには、“ニュー・スパニッシュ・ブックス”のレセプション参加権が付いたリターンもありますし、ぜひ支援して、本年度のレセプションに遊びに来てくださいね。

 

 


■New Spanish Booksについて

スペインの新刊書籍を専門家が日本市場向けに選定し紹介する。2011年から始まり年に1回「日本市場向けのおすすめ書籍」情報を更新する。スペイン貿易投資庁(ICEX)、スペイン教育・文化・スポーツ省およびスペイン書籍出版連盟(FGEE)の共催プロジェクト。

http://www.newspanishbooks.jp

2017/06/23 14:35