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若いLGBTの声を元に書かれた
スペインのゲイ小説「ぼくを燃やす炎」を翻訳出版したい!

ボクモヤには主人公オスカルをいじめるダリオが主役となる続編があったとは! ダリオもセクシャリティに悩み苦しむ高校生だったのか? 『ぼくを燃やす炎(El fuego en el que ardo)』をいち早く読んだ翻訳者・村岡直子さんによるブックレビュー。ゲイ小説ならではのラブシーンも一部公開!


『ぼくを燃やす炎』レビュー

 

 翻訳家、人気ブロガーであり、ゲイであることをカミングアウトしているマイク・ライトウッドさんが、性的指向に悩む少年少女たちの実体験を基に書き上げた初めての小説です。学校でのいじめ、〝マッチョ〟な父親、多様性が否定されてしまう小さな村での生活……、そのすべてに追い詰められた少年の苦悩が鮮明に描き出されています。

 

 主人公オスカルは、とても多感で繊細な16歳。自傷行為を繰り返し、「ゆっくり死んでいく」生活を送っています。街で知り合ったセルヒオとの恋によって前向きになり、強くなろうとしますが、心が傷つくたびにかみそりを手に取ってしまう。そのあまりに不器用な生き方に、読んでいるこちらが息苦しくなってしまうほどです。

 

 暴力的な父親に悩まされているとはいえ、本来のオスカルは明るい学校生活を送る、ごく普通の男の子でした。ところが親友であり初恋の相手だったダリオから手ひどい裏切りを受けたことがきっかけで、それまでの生活が一変します。ダリオにふられただけでなく、ゲイであることを言いふらされたために、クラスメートから執拗ないじめにあうようになったのです。トラウマを抱えこんでしまったオスカルは、オープンマインドで近づいてきてくれたセルヒオにも、なかなか打ち解けることができません。

 

 セルヒオはオスカルの抱える闇に気づき、慎重に距離を測りながら、でもまっすぐに思いを伝えてきます。おずおずとためらいながら近づいていくふたりの恋は、切なくてじれったくて、つい応援したくなります。そして、心と体についた傷ごとオスカルを受けとめて守ろうとするセルヒオの言葉や行為の、なんと甘いこと。こんなに理想的な王子さまがいるわけない、だけどもし、いてくれたら……と、乙女ならずとも夢想せずにはいられません。

 

 甘酸っぱい恋の行方、そしてオスカルが閉塞的な状況にいかに立ち向かっていったかは、皆さまにぜひご自分の目で確かめていただきたいと思います。最後のページを読み終えたとき、このピュアで心優しい少年たちとさよならするのが寂しくなるような、そんな本です。

 

翻訳者 村岡直子

 

追記:

 2017年2月、スペインでEl hielo de mis venas(ぼくの静脈を流れる氷)という本が出版されました。主人公は本書『ぼくを燃やす炎(仮)』で敵役として描かれていたダリオ。オスカルがいじめられるきっかけをつくった彼の独白で、親友を裏切ってしまった理由や罪悪感が綴られます。本書とは逆の視点から語られたこの小説には、「決めつけるのではなく、いろんな方向から物事を見よう」という作者ライトウッド氏のメッセージがこめられているのかもしれません。タイトルが「炎」と「氷」になっていることからも、この2冊が対になって初めて、本当の意味で完結するような気がして、「El hielo~」もいつか訳してみたいと考えています。そのためにもまず、本書『ぼくを燃やす炎(仮)』のファンディングが成立するのがスタート地点。生きづらさを抱えながらも明るい光に向かって歩く若者たちの物語を、日本の皆さまにお届けできる日が来ることを願ってやみません。

 

作品の試し読みはこちらから

 


ボクモヤ・プロジェクトは、支援者数110名、達成率50%となりました!

この、読んでおもしろく、そして、出版することで誰かを救うことができるかもしれないプロジェクト。ご支援いただいた皆様のお近くの方にも、このファンディングにご参加いただくことをお勧めいただけましたら嬉しい限りです。

 

残り期間26日間も、メンバー一同、達成向けて頑張って参ります!

引き続き、何卒お力添えくださいませ。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

2017/07/27 12:25