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日本初のレズビアンマザー絵本を誕生させたい!
絵本『In Our Mothers’ House (ママたちの家で・仮)』を翻訳出版して
全国の学校や図書館に届けたい!

改めてご紹介!『In Our Mothers’ House』のあらすじと作者ポラッコさんについて

こんにちは、『In Our Mothers’ House』翻訳出版プロジェクトメンバーのやひろです。先日の東京レインボープライド2018に参加された皆さま、おつかれさまでした!両日とも素晴らしい快晴で、パレード参加人数も過去最多と、印象的な日になったのではと思います。

プロジェクトも終盤に入り、いよいよ残すところ17日となりました。メンバー一同、最後まで気を引き締めて駆け抜けようとしております。

さて、プロジェクトも達成まであと少し!という現在。これまで原書を手に取っていただく機会を何度か設けて参りましたが、まだまだこの物語の魅力をお伝えしきれていないのでは?もしかしたらあとひと押しでご支援いただける方が増えるのでは?ならば伝えるなら今しかないじゃないか!うおー!!
というわけで、改めて『In Our Mothers’ House』と、作者のパトリシア・ポラッコさんについてご紹介いたします。え、今更?まあそう言わずに。

『In Our Mothers’ House』は、ミーマ(母その1)とマーミー(母その2)のレズビアンカップルが、肌の色の違う3人の子どもたち(長女わたし、長男ウィル、次女ミリー)を家に迎え、親族や地域の人々と一緒に楽しく過ごす日常を描いた物語です。時にはあからさまな偏見を投げつけてくる隣人と対峙しながらも、何気ない毎日を重ねていき、やがて子どもたちが独立し孫が生まれ、寄り添いながら老いていくところまでを見事に描ききります。物語を読み終わると、一家の歴史の一部始終を目の当たりにしたような気持ちになり、思わずため息をついてしまうのです。

ミーマとマーミーは、楽しいことが大好きです。子どもたちを抱えて踊っちゃったり、一家全員分のハロウィンのコスチュームを手縫いして仮装をしたり、おじいちゃんも招いて皆でじゃがいものニョッキをつくったり、地域の人たちを全員招待する大きな野外パーティを企画しちゃったり。次から次へと楽しいことを思いつく天才二人組です。周囲の誰に対しても明るくフレンドリーで、いつだってニコニコ微笑んでいます。どこにでもいそうだけど、とても魅力的なお母さんたちで、地域の人々も皆、二人のことを愛しています。そして二人が大切にしていることは、子どもたちにもしっかり受け継がれています。

しかし、二人のことを快く思わず、ずっと鋭い視線を向けてくるミセス・ロックナーという隣人がいます。ミセス・ロックナーの子どもたちはミーマとマーミー一家に友好的なのにも関わらず、彼女だけは終始腕組みをして、嫌な顔を崩しません。地域の野外パーティでは、とうとう二人の前につかつかとやってきて、「私はあなたたちのことなんか認めない!」と顔を真っ赤にして叫びます。賑やかな雰囲気は一瞬で凍りつき、ミーマもマーミーも、子どもたちも、地域の人々もたいへんなショックを受けます。このようなことがあっても、地域の人々は全員ミーマとマーミー一家に寄り添い、ハグをするのです。

ミセス・ロックナーは、物語の中でミーマとマーミー一家のハッピーな日々に強く揺さぶりをかける人物として描かれています。衝撃的で、見ていてつらく感じるところでもありますが、このシーンがあるからこそ、一家の存在が親族や地域に深く溶け込み、強い絆で結ばれていることがより感じられるのだと思います。

そしてやはりなんといっても、終盤でおばあさんになって寄り添っているミーマとマーミーの姿は、この絵本で一番ぐっとくるのです。「ふたりの女性が幸せに老いる」ということを示した絵本は、なかなかない…。

この物語を描いた作者のパトリシア・ポラッコさんは1944年、アメリカ・ミシガン州生まれで、これまでに60点を越える作品を世に送り出してきた大ベテラン絵本作家です。ユダヤ系ロシア/ウクライナ人の母と、アイルランド人の父のもとに誕生しました。

それぞれ異なる国の文化をバックグラウンドに育ったことは、ポラッコさんの創作活動における重要な経験になったようです。ポラッコさんの作品を読むと「家族のルーツ」がキーワードとなっているものが多く存在し、日本語に翻訳されている絵本では『チキン・サンデー』(原題:Chicken Sunday/アスラン書房)などがあります。肌の色の違うきょうだい、故郷の食べものや文化、家族の絆…といった描写は、『In Our Mothers’ House』とも共通していると思います。


 

また、ポラッコさんは幼い頃からディスレクシア(識字障害)を抱えており、14歳まで文字を読むことがうまくできなかったそうです。当時の担任の先生のおかげで文字が読めるようになった経験を、自伝的作品の『ありがとう、フォルカーせんせい』(原題:Thank you, Mr. Falker/岩崎書店)に描いています。『がらくた学級の奇跡』(原題:The Junkyard Wonders/小峰書店)でも、ポラッコさんが子どもの時に特別学級で信頼できる先生や、個性的な仲間たちと過ごした日々のことが描かれています。いずれも読みましたが、良い作品ですので是非チェックを!


 

『In Our Mothers’ House』を含め、ポラッコさんの絵本はどれも文章量がしっかりしていて、非常に読み応えがあります。のびのびとした絵は人物の感情がよく伝わってくるのでつい感情移入してしまいますし、洋服や仕草などの細部まで注目すると、絵本を開くたびに新しい発見があるのです。丁寧に丁寧に描かれた『In Our Mothers’ House』、日本語版を出版して、より多くの人に広めたいと思います。ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

2018/05/10 13:21