セクシュアル・マイノリティが連帯していくために
宇田川 僕はよくふざけて古賀さんと2人で出版界のブルース・ブラザーズになろうと言ってるんですけどね。
古賀 出版ゴロ2人が神の使徒として世の中の役に立とう、と。
宇田川 うん、一説では出版界の『まむしの兄弟』とも言われてますがそれはともかくとして、ですね。なぜ、この輩2人がレズビアン・マザーの本を出そうと思ったのかということについてお話ししたいんですが。
古賀 PRIDE叢書の2冊目はレズビアンを扱った本にしたいというのは以前から言ってたんですよね。
サウザンブックス古賀(左)と宇田川しい(右)
宇田川 ゲイを扱ったコンテンツは多いんですよ。だから、ともするとPRIDE叢書はゲイのシリーズみたいになっちゃいそうな気がして。PRIDE叢書のテーマはセクシュアル・マイノリティがプライドを持って生きていくための情報を発信することなんですけど、同時にセクシュアル・マイノリティが連帯していくことも訴えたいと当初から思っていたんです。
古賀 よくLGBTっていうけどそれぞれ立場が違うし、一緒にするのはどうなのっていう人もいますよね。
宇田川 たしかに、違いはあるんですけど、共感できる部分でつながっていったらいいと思うんですよ。LGBTっていう言葉はセクシュアル・マイノリティが共闘してきた歴史を背景に持っている。たしかに日本にはひょいっと移入されちゃった感はあるんですよね。だからむしろこれから連帯していくことでLGBTという言葉を実のあるものにしていけばいいと僕は思ってるんです。
古賀 なるほど、だからレズビアン・マザーを扱った本を出版してLとGの連帯を示したい、と。
宇田川 ゲイにはミソジニーの強い人もいて、とくに昔はそうだったんですよね。僕は昔、新宿2丁目で東郷健さんがレズビアンバーの店員と摑み合いの喧嘩をしてるの見てたりするわけです。“ここはアンタたちの来る街じゃないのよっ!”とか言ってね、東郷さん。
古賀 壮絶ですね……。
宇田川 ひどいでしょ。でも、レズビアンバーの子に簡単に組み伏せられちゃうの東郷さん。弱いんですよ。おかげで、まあ憎めないっちゃ憎めないというか、救われたんですけど。だから、リブの世界でもLとGの軋轢が露呈するようなこともあったんだと思うんです
古賀 まあいろんな事件はあったみたいですね。
宇田川 だからね、そういう対立にPRIDE叢書が終止符を打とう、と!
古賀 また大きく出ましたね……。
宇田川 ダイコウイデズンバってやつですよ!
古賀 ズンバ? 踊るやつ? まあいいや。そういうアホっぽいとこがいいとこだと思います。
ゲイも意識すべき男性特権
宇田川 それでレズビアンとゲイの連帯が隠しテーマだっていうのは前から言ってるんですけどね。もっと言うとゲイがレズビアンのためにもっとがんばろうよということなんですよ。
古賀 一般にレズビアンはゲイよりも社会的によりつらい立場にあるというのはよく言われますよね。
宇田川 男性優位社会の中でゲイといえど男性特権を享受してるんですよ。経済的には女性より恵まれてる男性2人がカップルになって子どももいないということであれば、それはけっこう豊かな暮らしが出来ると思うんです。それで、タワマンに住んで、ちょくちょく海外へ遊びに行ってみたいなライフスタイルの人けっこう多いですよね。そういうライフスタイルを楽しむのはいいんですけど。ただ、やっぱり自分が男性特権の上にあぐらをかいてるっていうことに意識的じゃないのは恥ずかしいと思うんですよ。そういう男性特権に無意識で、マイノリティでありながらマイノリティに差別意識を向けたりみたいなのは論外だし、セクシュアル・マイノリティの権利を主張するなら自分が享受している特権についてもきちんと認識すべきです。そして、それをみんなと平等に享受できるようにするにはどうしたらいいか考えたほうがいいんじゃないでしょうか。
古賀 特権を手放してるから主幹はビンボーなのかな。まあ、たしかにゲイはカミングアウトしなければシスヘテロの男性として男性社会の中で生きていけますもんね。
宇田川 もちろんカミングアウトするしないは、それぞれの事情だし、男性優位社会の中で身過ぎ世過ぎをどうするかっていうのもそれぞれの事情があると思うんです。でも、同じセクシュアル・マイノリティとして少しは他の人がどんな立場にあって、どんな困り事があるのかということについて考えてみてもいいと思うんですよ。
次第に弁に熱が入り出す宇田川
人権問題としてのLGBTイシュー
宇田川 さらに言うとセクシュアル・マイノリティが権利を求めていくときに、セクシュアル・マイノリティのことだけ考えていていいのかという疑問があります。結局、自分にとって都合のいいことしか考えてないっていうんじゃ説得力ないでしょ。セクシュアル・マイノリティの権利は広く人権問題一般として考えられるべきで、だとしたら僕らセクシュアル・マイノリティは他の人権問題についても考えながら、セクシュアル・マイノリティ以外のマイノリティとも連帯して、お互い助け合っていかなきゃいけないと思うんですよ。
古賀 お、いよいよ大風呂敷を広げましたね!
宇田川 うん、ちょっと自分に酔ってきました。まあ、それはともかくね、他のマイノリティと連帯しなきゃいけないときに、お隣同士のレズビアンとゲイが連帯できなくてどうすんの?という気持ちがあります。それで、先日のレインボープライドの会場でも『In Our Mothers' House』のフライヤーを配りながらそういうことも訴えていたわけですけどね。ちょっとショックだったのは「レズビアンには興味ないから」って言い放つゲイが何人かいたってことなんですよ。
古賀 いきなり全否定か。そりゃまた直球ですね……。
宇田川 まあ、20代でね、遊ぶのが楽しくてリブとかあんまり考えてませーんみたいな子なら、それはまあ若いから仕方ねえなあと思うんですけど、けっこうなトシいっててそれなりにLGBTコミュニティに関わってきたような人でもそういうこと言うわけですよ。
古賀 それは困りましたね……。
ゲイ・カップルも多様な家族のひとつ
宇田川 ね。じつは僕は今回、少し遠慮してる部分もあったわけ。この『In Our Mothers' House』っていうのはレズビアンマザーの話で当事者じゃないからね。やっぱりあくまで当事者の人たちの後押し的なスタンスでいたほうがいいんだろうと。ゲイとはいえここで男がやたらでしゃばっていくのも、それはそれで男性ジェンダー振り回してる感じでイヤだなって。でもね、ここはゲイが出ていかなきゃいかんよねと思いました。カンちがいしてるゲイはゲイ自身がなんとかしなきゃいけない問題だろうと。ちょっとゲイの人たちに社会の中で自分が置かれた立場についてもう一度よく考えてほしい。
古賀 へえ、遠慮なんかしてたんすね。意外。主幹らしくもないな。
宇田川 それにね、この『In Our Mothers' House』っていう絵本は、レズビアン・マザーを描いているけれども、同時に家族の多様性を描いてるとも言えるわけです。いまだに“標準世帯”っていう幻想があります。「お父さんとお母さんがいて、血の繋がった子どもが1人か2人いる」っていうね。でもじつはもはやそんな家庭は少数派なんであってね。さまざまな家族の形態がすでにある。レズビアンマザーだって視覚化されていないだけで大勢いる。シングルマザー、シングルファーザー、養子や里子といった血の繋がっていない親子、現実の家族はもうすでに多様化されてるんですよ。それなのにいまだに標準世帯みたいな幻想を追ったり、古臭い家族観に拘泥したままさまざまな施策がなされることの弊害は大きいと思います。少子化対策がまったくうまくいかないというのもそういうところに原因があるんじゃないか。結局のところ全ては女性の生きづらさというところに行き着くと思うんですよ。
古賀 結局、すべては女性問題じゃないかっていうのは主幹はよく言ってますよね。あれ、今日もそうだけど、LGBT関係のイベントの時、主幹てだいたい黒シャツに黒パンツじゃないですか。それって、もしかして……。
宇田川 お! そこに気づいていただけましたか。そうなんですよ……。
古賀 『まむしの兄弟』へのオマージュですよね。
宇田川 ちゃうわ! #MeTooやろ!! あのね『In Our Mothers' House』はレズビアン・マザーの問題だし、女性問題でもあるんですよ。そして多様な家族の問題でもあります。それは誰にとっても自分のことなんです。ゲイのカップルだって多様な家族のあり方のひとつなんですよ。だからゲイにもこれが自分ごとなんだと分かってほしい。
古賀 なるほど!
宇田川 だからね、僕はゲイに言いたい。「ゼッタイ、買いなさいッ!!」。
古賀 ああ、今のおすぎさんのモノマネですよね。あんまし似てないし、文字じゃ伝わらねえけど……。
宇田川 いろいろメンドクサイこと言っちゃいましたけどね、まあ、単純にとても良い絵本でもありますよ。大人が読んで楽しめる絵本です。あとね、とてもセンスがいい絵本だと思います。だからね、タワマンに住んでるゲイの皆さんはリビングになにげなくこの絵本置いておくといいですよ、インテリアとしてね。ホムパで集まった人たちに意識高いなあって思ってもらえるからさ!
おずぎ以外にもモノマネを連発する宇田川にしらけつつも・・・。
最後は、ブルース・ブラザーズ?まむしの兄弟?きどりでパチリ。
達成率はもうすぐ80%!
支援者数はなんと300名を超えました!
残り14日、もう少しのご支援でレズビアンマザー絵本の出版が決定します。
ゲイの方はもちろん!
老若男女すべてのみなさま、引き続き、どうぞどうぞ、宜しくお願い致します!