9月5日に行った読書会に参加した阿真京子さん。今回のプロジェクトに興味はもっていたものの、実際に『色についての黒い本・仮』の原書を見て、「これは、いい。すごくいい。すてき。触れていると、なんだか音楽が聞こえてくるみたいな気がする」とべた惚れ状態に。「会員にも呼びかけてみます!」というありがたいお言葉をいただき、阿真さんが代表をしている活動のことを聞かせていただきました。
「知ろう小児医療守ろう子ども達の会」…、名前、長いですね(笑)。
あはは、そうですよね。私たちは医療関係の団体ですが、子どもの病気について、誰よりも親たちが知ろう、親が知ることで安心して子育てをしよう、親が知ることで子どもたちを守ろう、という思いで活動をしています。
会を立ち上げたきっかけは何だったのですか?
平成16年に、当時9か月だった長男がけいれんを起こして救急搬送されました。45分も続くけいれんで、そんなことは初めてで不安でいっぱいで。でも搬送された病院の待合室は、親と子であふれかえっていました。救急外来のはずなのに、必ずしも重症のお子さんばかりではなく、軽症のお子さんは走り回っているし、親御さんは長い待ち時間にイライラしていて。幸いに、私の長男は後遺症も残ることなく退院できたのですが、自分が思い描いていた医療の世界とのあまりのギャップに衝撃を受けました。
それから、小児医療の状況を調べてみたり、国外の友人から日本の小児科医が過酷な労働環境に置かれていると聞いたりしたことで、親がもっと子どもの病気のことを知っていれば、医療の世界や小児科医の先生方に過剰な負担をかけなくてよくなるのではないかと考え、この会を立ち上げました。
母体となる組織や、後押ししてくれる団体があったのですか?
何もありませんでした(笑)。ないなら作ろう、と思って立ち上げたんです。最初は、個人ブログでの発信だけでしたが、具体的な活動をしようと思い立ち、自治体や行政に呼びかけました。「医療について、親が知る機会を作ってほしい」と。でもなかなか難しくて。結局は、自分たちで講座を開催するということになりました。本当に手作りの勉強会から始めたのですが、今では、これまでに150回ほどの講座を開催し、5000人以上の親御さんに子どもの病気のことを知っていただきました。
すごい行動力ですね。今は主に、どんな活動をされているのですか?
私自身は学会や研究会など、呼ばれたところに行ってお話をすることも多いですが、団体の立ち位置である「健康な子どもの親こそ、子どもの病気のことを知ろう」というところは、今は会員たちが担ってくれています。つまり、親から親へ、という形で、病気の知識を伝えることができているんです。もちろんそこには、会の活動に賛同してくださる多くの小児科医の先生方からの協力もあって、本当に多くの方にささえていただいていると感謝しています。
子どもが生まれるとそれだけで忙しかったりして、なかなか勉強する機会を作るのは難しいような気もしますが…。
そう、そうなんです。だけど、機会さえあれば30分、1時間でものすごく多くのことを知ることができるんです。私たちもこれまで、冊子や動画、アプリなど、いろいろな工夫をしてみましたが、やはり、生の人間と生の人間が会うことが大事なんだと思っています。講座を開催して、小児科医の先生にお話をしていただくと、参加者の方が、「診察のときにはできなかった質問に、こんなに丁寧に答えてもらえてとてもうれしかった。安心できた」と言っていただけるので。
ここまで来ると、もうこの活動はやめられないですね!?
いえ、すべての親が誰でもみんな、子どもの病気のことを知ることができる日がきたら、すぐにでもやめます。この会のゴールは、「知ろう小児医療守ろう子ども達の会」が、必要なくなることなんです。
小児医療を知ることで、親は過度に心配しすぎることなく子育てできるようになります。しかし実は、診察のかかり方や医療との付き合い方を知ることは、子どもが小さいときだけでなく、生涯にわたって役立つものです。
昨年から、企業で「働き方改革医療講座」を始めているのですが、これは、子どもは病気をするものなのだという認識を広めて、いずれは家族に介護が必要になるケースや、自分自身も病気になる可能性があることに気づいてもらうことで、子育て世代のみならず、誰にとっても働きやすい世の中を目指しています。
子どもの病気を知ることからスタートしたこの会ですが、ゴールまでの道のりを探るなかで、会としてしたいこと、そして会にできることが増えてきました。これからも、医療がより良くあるために、さまざまな角度から活動を行っていくつもりです。
代表の阿真京子さん
勉強会の様子
発行している小冊子の『しろう通信』
取材の後の記念写真。応援ありがとうございます!