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「人」を中心にして組織を変える
今、注目のポジティブ心理学によるアプローチ
近年、激化した経済競争の真っ只中、企業で働いていて、「幸福」、「協力」や「優しさ」について語ることは空想にすら聞こえてくる。本書の目的は「人」を中心にして考えられた組織が、大小を問わず、企業運営についても有益であることを証明することだ。数々のインタビューや調査結果を用いて、マネジメントや組織論の固定概念を変える。そんな組織が、その構成員のみならず、社会全体にも良い影響を与えることができる。
大きく分けて、5部構成となる本書は、新しいタイプの組織論や組織改革に関わる方、興味を持つ方はおさえておきたい1冊。
1.充実した仕事とは(個人の観点)
2.平和な関係づくり(チームの観点)
3.社会のための企業(企業と社会の関係性の観点)
4.環境課題の解決法として(社会を超えて、環境との関係性の観点)
5.企業たるものを考え直す(“企業”の見方を振り返って)
書名:Les entreprises humanistes(思いやり組織論・仮)
著:Jacques Lecomte
発行国:フランス
言語:フランス語
発行年:2016年
ISBN:978-23-520447-3-4
著者:Jacques Lecomteのインタビューより
(2016年4月のPsychologies Maagazineより)
このご時世、すべての会社にミッションとビジョンがある。しかしこれがあるからと言って、質の高いマネージメントを保証されるわけではない。嘘をつく組織はすぐに見破られ、あっという間に悪名高き企業となってしまう時代だ。逆に、人を大切にする会社は社員を第一に考え、顧客もサプライヤーも大事にしている上に、環境保護に努め、社会に良い影響を与えようとする。
多くの会社が「方法」にばかり着目する。どうやって売るのか? どうやって生産するのか? どうやって利益率を上げるのか?経営者というのは、そもそも自組織の目的について考えるべきだと思う。自組織の存在意義は何か? 株主の利益だけではないはずだ。
社員はより高い利益率を実現するための道具ではない。社員の状態こそが会社の目的の一つである。経営者の興味関心あるもの(利益の向上)を利用し理解してもらう必要があるとよく言われるのだ。しかし、多くの経営者は社会や環境に与えている影響に関心があるのだ。しかも、社会的責任をしっかり果たしている企業は決まって、高い利益を生み出している。
人を大切にする会社は方法論ではなく「あり方」である。信頼関係が中心となり、また信頼というのは演技できるのものではない。経営者が自組織の社員を完全に信頼しているとき、社員の主体性が高まり、責任感と求心力が生まれるのである。
《目次》
序章
ポジティブ心理学とコンビビアリズム
企業がコンビビアリズムを採用すべき理由
職場での幸福は手段ではない
第1章 職場で個々が開花するということ
1. 職場で幸福を感じるとは
フロー理論
仕事はフローを可能にするもの
仕事に意味を見出せる人とは
2. 転職を見つける
今の仕事をどう捉えているか?
どんな仕事でも天職として捉えることができる
天職にするために今の仕事を豊かにする
3. 真のモチベーション
インセンティブがモチベーションを下げるのはなぜか?
人の三つの心理的なニーズ
4. 役に立つということ
親切心は職場での幸福の最大の要因
モチベーションを高めるもの:自分の仕事の与えている影響を確認すること
共感が創造性を生み出すとき
親切心と分け合う幸福
国民のために働くという動機
5. お金のために働くのか?
意外な調査結果
仕事の動機となりうるもの
我々が自然と持つ人間観
高い基本給が内的動機づけを高める
宝くじに当たったら、仕事をやめますか?
第2章 調和できる関係性
7. 信頼が最も大切
社員を管理するのが非生産的な理由
職場でなぜ自由が必要か
そして、責任という倫理観
自由に働けた方がオーナーシップがたかまる
パッカード氏の提言
人は善良であると信じている会社:FAVI
“ハード“な社長が一変する
幸福部長の経験
自分の社員を信じることがイノベーションを生む
8. うまく協働すること
サガマルタと協働
協働できる社員がもっともパフォーマンスを発揮する
組織が協働を促すのか、妨げるのか
医療現場での協働
協働が市民の証
協働の問題点とその解決策
デビルズアトーニーが必要なわけ
9. 人のために働くということ
同僚を自発的に助ける
良いリーダーは謙遜する
ニューヨークでの福祉から
サーバントリーダーシップ
優良航空会社の秘訣
10. 親切心が喜びとパフォーマンスを生む
承認欲求
お互いを承認する
公平性
アプレシエイトする
11. 対立の平和的解決
お互いの人間性をみることができた体験
仲裁者に求められる素質
仲裁者は人間関係の修理屋
全てを変えるちょっとしたルール
感情を受け入れよう
経済的で効率の良いアプローチ
調和は調停と裁判より良い
弁護士が変わろうとするとき
大きな変化
第3章 社会のための企業
12. 革命的な理論
安全を高めるためにダイアローグは罰より有効
安全と効率は繋がっている
落ち着いて考えられた人間観
ネガティヴとポジティブフィードバックをバランスよく伝える
諌めるのも大切だけれども、その真相とは
なぜこのピラミッドにこれだけ影響力があるか?
企業と監査役の補完的な役割
新しい発想の本質を忘れないことが大事
良い取り組みを支えることの大切さ
13. 企業が貧困の軽減に努めるとき
医療は人のためであり、収益のためではない
フィランソロピー
ピラミッドの下に富を
マイクロクレジット
ソーシャルビジネス
ガワッドカリンガのストーリー
14. ソーシャルエコノミー
モンドラゴン共同経営
ソーシャルアントレプレナー
15. 大災のリスクを軽減する
コミュニケーションの問題:大惨事の大きな要因
産業災害:大抵の場合は予測可能
信頼される企業の秘訣
刑罰が安全を脅かすとき
医者が飛行機のパイロットを真似た
16. ヒューマニスティックカンパニーは収益を上げているのか?
自身の原理原則に忠実であること
相反する結果
中途半端は駄目
第4章 環境問題に取り組む
17. 地球を救うことは可能
飴と鞭より良い
経営層の倫理
国の期待を超える社長の働き
環境保護団体と企業が協働する
グリーンカンパニーは儲かる
18. 産業の環境保護の三つの成功
もっとも汚染された場所が保護地区に変わった例
ヨーロッパの最大の汚染水がもっとも綺麗な川になった例
オゾンが再び戻ってきた
最終章
19. 企業倫理は幻?
株主は企業の所有者なのか
株主がダイナマイトを使って漁をするとき
拝まれた企業の大社長がつぶれた
変わった麻薬売人
私以外は犯罪者
何も解決しない・・・解決策
20. 視点を変える
社長は大金をするより自己実現がしたい
家族経営がなぜうまく行くのか
ポジティブ心理学の悪用に注意
企業は社会のために動くべき
今から変わるのはいかが
コンビビアリズムで社会を変える
終わり:楽観になって世界を変える。
私はコーチとして、日々、人と組織を扱う仕事をしている。イノベーション、ディスラプション、AI、次世代型組織、ミレニアル世代……企業が流行語に取り憑かれ改革を進める中、一つの事実だけは変わらない。組織は人が集まり、仕事をする場所である。そして、世界にも、日本にも、この「人」を単なる利益の道具ではなく、「目的」として扱う企業があり、成功を成し遂げている。
社員を目的として扱い、「信頼関係」を軸にした雇用関係を結び、ひいて社会と環境を大切にしながら営みを進めるのは新しいものではなく、まさに日本に古くからある近江商人の三方よしに他ならない。この経営感覚はまさに特定の人間観から来るものであり、方法論では語りきれないものがある。
近頃、ホラクラシーやティール組織など次世代の組織のあり方についての貴重な書籍が出版され、方法論まで具体的に落とし込まれたものが増えてきた。私は、改めてどんな人間観、どんな社会観に基づいてこれらの方法が考えられたのか、いわゆる「導入」編の書籍が欠けていると思い、日本にこの本を紹介したいと思った。
長年、立ち止まらずに事業拡大を進めた経営者、マネジメントの方々に、賛同いただき、目を向けていただければ、その企業の社員や社会に絶大な影響をもたらすと信じている。
発起人:合同会社LifeCrack代表 Patrick Laudon(パトリック ロードン)
フランス生まれ東京在住のエグゼクティブコーチ。未だにもっとも神秘的に見える「人」に限りない好奇心を持ち、心理学、哲学、社会学、特に個と組織の独創性、倫理、社会的責任と多様性を探求しつづけている。
在日外資系企業と海外進出を進める日本企業の手助けと共に、香港、上海、シンガポールを含むアジアでコーチング、リーダーシップ教育プログラムと組織開発コンサルティングを幅広く展開する。
コーチの仕事を通して、違う「人間観」や「組織観」がもたらす組織の可能性を顧客と探りながら、仕組み制度が人にもたらす影響を研究し続ける。
https://www.lifecrack.asia/
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