image

ビール醸造を極めた男の数奇な人生を描いた
ドイツのミステリー小説
『ビールの魔術師』(原題:Der Bierzauberer)を翻訳出版したい!

ビアジャーナリストのコウゴアヤコさんから、応援コメントが届きました!

 本書の企画・翻訳を務める森本智子さんと出会ったのは、2012年の秋。ドイツ在住日本人に向けた小冊子に掲載する記事を作成するためにインタビューをお願いしたのがきっかけでした。当時、森本さんはドイツ食品普及協会の会長であり、日本人初のドイツ醸造アカデミー認定のビアソムリエとして日本にビール文化を広めるべく奔走されていました。

 ドイツに関する膨大な知識もさることながら、飄々としたしゃべり口と、ユニークな言語表現にグイグイと引き込まれ、インタビュー時間を1時間以上オーバーしても、ふたりでおしゃべりをしたのを思い出します。

 そんな森本さんが今回、翻訳を手掛ける本は、『ビールの魔術師』。中世ドイツの修道院を舞台に繰り広げられるビール醸造にまつわるミステリー小説です。架空の物語ではありますが、実在する場所や史実なども含まれ、中世の人々の日常や、修道院の内部を垣間見ることができ、ビール醸造の歴史が分かる面白いストーリーになっています。

 ドイツビールを溺愛している私の持論ですが、「中世ドイツの歴史は、ビールの歴史」。食文化は人々の生活や、地理的環境、さらには政治など様々な事柄を反映しています。ワイン用ブドウの栽培に適さずできず、生水も安全ではなかった中世ドイツの場合、ビールは安全な飲みものとして生活必需品。各家庭や村の集会場、修道院でもビールは造られていました。古今東西、人々にとって“安全な食”が得られることこそが重要、それができない君主はその座に居座ることはできませんでした。ドイツが誇るビールに関する法律「ビール純粋令(注1)」が、500年以上を経て今もなお受け継がれている理由も、この物語を読めば理解できることでしょう。

 そんな時代や食文化を舞台に繰り広げられる、主人公ニクラウスのビール職人としての成長と、不思議な殺人ミステリー。森本さんの軽快な文章によって、中世ファンやビールファンのみならず、ミステリーファンも楽しめることでしょう。

 クラウドファンディング成功のあかつきに醸造される「小説の時代背景に合わせ作者が考えたオリジナルレシピのビール」も大変興味深いものです。物語の世界にどっぷりつかりながら、オリジナルレシピのビールが飲める日を心待ちにしています。

(注1)ビール純粋令/1516年に当時のバイエルン公国で交付された法令で、ビールの原料を麦芽・ホップ・水のみと定めている。現在まで残る食品に関する法律としては世界最古。

 

 


コウゴアヤコ
1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。看護師を経て、旅するビアジャーナリストに転身。旅とビールを組み合わせた「旅ール(タビール)」をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ドイツビールに惚れこみ1年半ドイツで生活したことも。海外生活情報誌ドイツニュースダイジェストで「旅ールのススメ」連載中の他、各種メディアで活躍している。

 

2020/04/22 10:55