東京で、韓国をはじめアジアのアーティストのリトルプレスや本に出会える場所といえば、ポポタムさん以上の書店はありません。そんなブックギャラリーポポタム 店主、大林さんから温かい応援メッセージをいただきました。
2015年に初めてソウルアートブックフェア(Unlimited Edition)に参加したとき、韓国のインディ・ブックがかっこよくてびっくりしました。新鮮でやばいイラスト、おもしろそうな本が山のようにあり、大興奮しました。韓国語が全くわからない私は、気がつけば読めもしない本を買いまくっていました。あの時の熱は今でも冷めず、私を年に何度も韓国に連れて行きます。
ハングル文字があふれる会場で、ふと日本語が目にとまりました。ゲイ漫画家の野原くろさんのポストカードやグッズを出品しているブースがあったのです。それが6699pressでした。漫画の中のキュンとくるセリフをフキダシのまま抜き出したデザインのトートバッグを買いました。
ちょうど前日、ブックフェア会場近くのソウル市庁前で、私は同性愛者に対する激しいヘイトスピーチを目にしていました。日本でも根深い差別偏見があるけれど、同性愛を禁じるキリスト教社会が強い韓国で生きるLGBT・クィアの人々の厳しさを目の当たりにして、ショックを受けていました。
その後、私も毎年UEに出展するようになり、6699pressのジェヨンさんをはじめ、韓国の独立出版社や作家たちと顔見知りになりました。韓国語が読めなくても買いたい私のような日本人も多少はいるだろうと、彼らから本やzineを仕入れ、今ではポポタムの本棚一列分プラスアルファが韓国本コーナーです。
もちろん『キミのセナカ』韓国語版も販売しています。
ブックデザイナーのジェヨンさんの本づくりは優しく、『キミのセナカ』を手にした時も、高野文子『黄色い本』(ジョクプレス)の韓国語版を手にした時も、作品が大切にされているのをひしひしと感じました。そしてその作品にとって大事な世界を、同様に大切にしていることが伝わるのです。
本を手に取った瞬間の’その感じ’は、読者にとってとても大事です。
たとえば歩き疲れた時にどこからか吹いてくれる気持ちのいい風や、辛いときに黙って寄ってくる飼い猫や、何が起きていても毎年咲く雨の日の紫陽花みたいに、世界は優しいな、と思える瞬間に似ています。
野原くろさんが描く『キミのセナカ』の世界、韓国で最初に本にしたジェヨンさん、そしてたくさんの読書が待ち望んでいる世界。日本でも出版できたら、本当にいいなあと思います。
ブックギャラリーポポタム 大林(대림)えり子
『「私」のバラけ方』(韓国語版) 大竹昭子、高野文子著
『おともだち』(韓国語版)高野文子著
『ナルトと下宿のお兄さん 하숙집 형들과 나루도』野原くろ著
『キミのセナカ 너의 뒤에서』野原くろ著
ブックギャラリー ポポタム
池袋と目白の間にある、ギャラリー併設の書店。
古今東西の本屋リトルブレス、アート作品やグッズがたくさんあります。
なんといっても、韓国のインディペンデントな出版物は、まるでソウルの本屋さんにいるかのような充実度!現在は店舗営業再開に向けて準備中ですので、オンラインストアをご利用ください。
http://popotame.net/