先日、WEBマガジンTime Out Tokyoの記事「東京、学びのクィアスポット6選」で、入谷のカフェRyusen112、新宿の書店IRA、喫茶オカマルト、コミュニティセンターakta、西荻窪のKosatenとともに、書を捨てず町へ出よう、プライド月間を契機に訪れたい場所に選ばれていた、中野の書店タコシェ さん。
「東京にタコシェ があってよかった」とつくづく思う、唯一無二な存在の書店です。そんなタコシェ の店主、中山さんから『キミのセナカ』へ応援メッセージをいただきました!
野原くろさんの漫画が、韓国、台湾、フランスを経て、いよいよ日本にやってきます(予定)。
ここ10年ほど、海外の翻訳漫画の進化が目覚ましく、その充実ぶりから目が離せません。
その理由は、各国に漫画独特の文法や日本の生活や文化に親しんだ優れた翻訳者が増えたこと、書籍化にあたって日本での編集・デザインを踏まえながら各国で独自の解釈やアレンジを加えた装丁を行っていること、コミックジャーナリズムや評論の充実などなど、があげられます。
「キミのセナカ」は、ソウルの6699pressの依頼で、野原さんが描きおろした作品で、ドラマチックな事は何もおこらないけれど、平凡な男子高校生が友情と恋愛の間で揺れる心情を丁寧に描いています。多くの人が思いあたるであろう、学生時代の片思いや告白、失恋 etc.は、国や性別を超えて共感を呼び、韓中英仏の4ヶ国語に翻訳されました。
タイトルだけ見ても、原題「キミのセナカ」が、韓国語では「너의 뒤에서」、そして韓国版から訳された台湾版では「在你背後」、”君の背後”というニュアンスになるのか、二人の位置関係が表現されているようで、表紙は美しい夕焼けを背景に土手を自転車で二人乗りする主人公たちの景色が象徴的に使われています。対して、英語版ではSTARING AT YOUR BACK、仏語版ではMES YEUX RIVES SUR TOI (英語にそのまま置き換えるとmy eyes glued on you かな? 背中は消失)と、ぼくの"ガン見感"が強まり、表紙にはきみの裸の背中が描かれています。
こんな風に漫画の世界ツアーを追いかけたり、ご当地味をチェックするのも最近の楽しみの一つです。
「キミのセナカ」の場合、日本で描かれた作品を、まず韓国で出版し、そのデザインを生かしながら、今度は日本語版の企画・デザインを担当するloneliness booksさんが、タイトルをデザインし、枠線や日本語フォントを調整し、描き下ろしのオリジナルページも追加する予定だそうです。
創作の初期から作者とともに作り上げた韓国版デザインのこだわりを受けついだ素晴らしい日本語版を作るためには、紙や印刷など基本的な素材と技術のクオリティを高く保ちながら制作部数も確保する必要があります。
日韓両国のデザイナーの理想を叶えた美しい本の実現を応援し、手にするのを楽しみにしています。
タコシェ TACO ché店主 中山
【今、タコシェ で買える、個人的オススメの本を2冊!!】
『風と行き先』みなはむ
今年の5月、台北のMangasickで開催された展覧会に合わせて制作された、みなはむさんの画集。夏の湿度と生命力がにじむ絵が素晴らしいです。
『都市儷人』Overloaddance 超載舞步
野性的で素朴で大柄、存在感漂う男たちの哀愁や痛みを描く香港のアーティストOverloaddance 超載舞さん新作、大傑作です!
loneliness books
潟見陽