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グラフィックノベル史に燦然と輝く傑作
『Asterios Polyp(アステリオス・ポリプ)』を翻訳出版したい!

翻訳者の岸本佐知子さんと柴田元幸さん、特別オンライン講義コースで講師としてのご参加が決定!

 こんにちは。『アステリオス・ポリプ』翻訳出版クラウドファンディング発起人の矢倉喬士です。

 先日、小説家であり翻訳家の大滝瓶太さんに『アステリオス・ポリプ』の内容を説明し、企画への応援メッセージの執筆をお願いする機会がありました。その際に大滝さんは、アーティストの半生を辿る文学という点で、最近読んだスティーブン・ミルハウザーの小説『エドウィン・マルハウス』に似た面白さを感じたとおっしゃっていました。それを聞いた僕は、ミルハウザーの作品なら、この世の全てを飲み込もうとするかのような建造物が登場する建築小説として、『マーティン・ドレスラーの夢』もまた『アステリオス・ポリプ』を思わせる面白さがありますと応答しました。

 スティーブン・ミルハウザーの『エドウィン・マルハウス』と『マーティン・ドレスラーの夢』。『アステリオス・ポリプ』がもたらす読書体験とその悦楽に近い要素を備えたこの二つの作品は、岸本佐知子さんと柴田元幸さんの翻訳で日本の読者に届けられました。偶然にも名前が挙がったミルハウザーの二冊を岸本さんと柴田さんが翻訳していたのは、もはや運命的としか言いようがないように思いました。このお二人を、『アステリオス・ポリプ』のクラウドファンディングの全6回特別講義つきプランのゲスト講師としてお迎えすることが決まっていたのですから。しかも、柴田さんはポール・オースターの翻訳者としてもよく知られ、オースターの『ガラスの街』を邦訳されていて、同じ作品を『アステリオス・ポリプ』の作者デイヴィッド・マッズケリ氏はグラフィック・ノベル化しています。オースターの小説を経由して、柴田さんとマッズケリ氏はつながっているのです。

 岸本さんも柴田さんも翻訳者として長く活躍してこられて、今年の9月にもお二人が選出した翻訳短編アンソロジー『アホウドリの迷信 現代英語圏異色短篇コレクション』をスイッチ・パブリッシングから発表されたばかりです。このお二人には、全6回の『アステリオス・ポリプ』特別講義のどこかの回に揃ってゲストとしてご参加頂き、翻訳という観点から作品の魅力を一緒にお話できればと思っています。

 『アステリオス・ポリプ』の翻訳は、一筋縄ではいかない厄介な作業です。それにはいくつかの理由があります。まず、全キャラクターのセリフの字体と吹き出しの形が個別にデザインされていて、それぞれのキャラクターが明らかに別人であるように訳し分ける必要があります。これについては、日本語の一人称の豊富さを利用して全キャラクターに個別の一人称を割り当て、さらに、各キャラクターに固有の口癖にはビデオゲーム『どうぶつの森』シリーズの動物住人たちの口癖のパターンも参照しながら個別に口癖を与える案を試しています。また、主人公のアステリオスがこれまでに出会ったことがなかった人々に出会うという筋書きは、彼が癖のある話し方をする人々に次々に出会っていくということでもあり、頻繁に言い間違えをしたり、どもったり、韻を踏みながら卑猥なダブルミーニングを折り込んだり、様々な固有の話し方が現れます。これに対応するために、英語の文脈から逸脱しないように日本語でも同様の言い間違えを模索したり、卑猥な言葉をいろいろ調べたりしています。そして最後に、これは自分たちで課した厄介さではありますが、常に物事の半分しか見られない人物の物語を翻訳するにあたって翻訳者もまた作品の半分しか翻訳できないような翻訳体制にしようと考え、はせがわなおさんと僕の二人で分担して翻訳を進めています。二人の翻訳を持ち寄って、すり合わせる必要があり、これもまた翻訳の作業工程を増やしています。

 岸本佐知子さんと柴田元幸さんには、上記のような『アステリオス・ポリプ』翻訳戦記をお伝えしたうえで、お二人の豊富な翻訳経験に照らしてご意見を伺えればと思っています。『アステリオス・ポリプ』は100年後も読み継がれるであろう名作ですが、岸本さんや柴田さんのような名翻訳家ならどのように訳されるだろうかと思う箇所が沢山あります。今から特別講義の日が楽しみです!

 『アステリオス・ポリプ』、全6回特別講義のゲスト講師として、これまでにポピュラー音楽・米文学研究者の大和田俊之さん、漫画家・イラストレーターのサヌキナオヤさん、哲学研究者の西條玲奈さん、演劇・ミュージカル研究者の辻佐保子さん、写真家・文学研究者の別所隆弘さん、建築家の岩元真明さんの6名を発表しました。ここに翻訳者の柴田元幸さんと岸本佐知子さんを新たにお迎えします。ぜひ、豪華なゲスト講師陣と一緒に『アステリオス・ポリプ』の世界をさらに深く楽しみましょう!

(気が早いですが、クラウドファンディングの支援額が達成額を上回った場合は、さらなるゲスト講師をお招きできます。ぜひご支援よろしくお願いします。)


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2022/11/18 12:17