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書籍『LGBTヒストリーブック日本運動史編(仮)』を制作発行したい!

過去から未来へ 歴史の流れは、婚姻の平等の実現へ(山縣真矢)

こんにちはサウザンブックスPRIDE叢書です。全国5か所で進行中の「結婚の自由をすべての人に」訴訟。先日、東京地裁では「憲法24条2項に違反する状態」との判決が下されました。東京二次訴訟(2021年3月提訴)の原告の一人でもあり、本書の編著者でもある山縣真矢さんに、この訴訟や本プロジェクトに対する想いを、いま一度伺いました。
 


 2022年11月30日(水)14時。
 「結婚の自由をすべての人に」東京一次訴訟の地裁判決が言い渡されました。東京二次訴訟(2021年3月提訴)の原告の一人でもある私は、傍聴席の最前列でその様子を見守りました。
 この訴訟は、法律の上で同性のカップルが結婚できない現行の法律が、憲法に違反するかどうかを争っているもので、具体的には、14条1項(法の下の平等)、24条1項(婚姻の自由)、24条2項(婚姻・家族に関する法律の制定は「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚」)が対象となっています。

 ご存じのとおり、池原桃子裁判長は「現行法上、同性愛者についてパートナーと家族になるための法制度が存在しないことは、同性愛者の人格的生存に対する重大な脅威、障害であり、個人の尊厳に照らして合理的な理由があるとはいえず、憲法24条2項に違反する状態にあるということができる」としました。
 いわゆる「違憲状態」判決です。
 法律上での評価や分析は専門家に譲るとして、判決後の東京地裁前での「旗出し」では、「婚姻の平等に前進」との横断幕が出され、その後ろで「違憲状態」の文字が掲げられたように、希望の持てる前向きな判決ではありました。
 その一方で、すでに各所で指摘はされていますが、大きな問題を一つ挙げるなら、原告は異性カップルと同等の「婚姻」を求め、「婚姻の平等」を訴えているにもかかわらず、登録パートナーシップ等の別の制度をも想定できるとしている点で、これは「同性婚を二級の婚姻」(木村草太)と位置付け、かつてアメリカにおいて、白人用と黒人用とに学校や公共施設を分けることを正当化した「分離すれども平等」につながるものであり、そこに潜む「差別」や「差別感情」について、あるいはマジョリティ側の傲慢さについて、「人権の砦」たる裁判所の裁判長には自覚的であってほしかったです(確信犯?)。

 池原裁判長が判決を言い渡した直後、私はとてもモヤモヤしていました。横並びで座っていた二次原告仲間も同様でした。「違反する状態」だが、「違反すると断ずることはできない」って、それって、どういうこと?
 法廷を出ると、解説をする弁護士たちの周りにいくつかの輪ができていました。その一つに私も加わり、耳を澄まして聞いてみるものの、すぐには理解できません。それで、弁護団の親分的な存在、中川重德弁護士(あの「府中青年の家」裁判の!)に聞きました。
 「結局のところ、喜んでいいの? 悪いの?」
 中川弁護士は満面に笑みを浮かべ、「喜んでいいんだよ!」ときっぱり断言してくれました。そこでようやくモヤモヤが晴れ、破顔一笑、全身からどっと力が抜けました。

 すぐ横では「旗出しチーム」が何やらひそひそ相談しています。
 どのような判決が出るかを想定し、メインの横断幕4種類とサブ8種類をあらかじめ準備し、内容に応じて選択し、旗出しすることになっています。ただ、ここで問題が発生します。「違憲」は想定していたものの、「違憲状態」までは想定していなかったのです。
 悩んでいる時間がないなか、器用な若いスタッフが素早い判断で動きます。「違憲状態」の文字をA3用紙2枚に収まるようにパソコン上で組み、裁判所の地下にあるファミリーマートで印刷し、それをセロテープで張り合わせ、この急場を凌いだのです。
 たくさんのメディアやサポーターが待つ地裁前へ移動し、メインの横断幕を持つ一次原告が並び、その後ろに、私も含めサブ小旗を持つ二次原告3人が立ち、「せーの」の掛け声とともに「旗」を開きます。
 シャッター音がサラウンドで押し寄せ、大きな拍手が私たちを包み込みます。こうして無事、旗出しという大役を果たすことができました。
 掲載している「違憲状態」という旗出しの場面の写真の裏側には、こんなちょっとしたエピソードがあったのです。

 本家の『LGBTヒストリーブック』を読めば、多少の揺り戻しはあったとしても、歴史の大きな流れは婚姻の平等へと向かっていると確信が持てることでしょう。そして、日本もその例外ではなく、遅かれ早かれ、同性婚が実現される日が必ず来ることでしょう。そう思えるのは、日本においても、LGBTQの人権運動が着実にその歩みを前へ進めている実感があるからです。
 『LGBTヒストリーブック 日本運動史編(仮)』では、私のその「実感」を解きほぐすべく、過去から現在に至るなかで歴史を動かしてきた有名無名の人たちへ敬意を払い、日本のLGBTQ運動の大きな流れをとらまえたい。そして、その流れの中に、前述の旗出しのようなちょっとした挿話や、人間味あふれる逸話をちりばめ、物語に立体感を与えられたらと思っています。
 この歴史の物語が、次世代の若者たちの勇気や希望となれば嬉しい限りです。

山縣真矢
 


結婚の自由をすべての人に訴訟・東京地裁判決後の「旗出し」の様子
撮影:松岡宗嗣


現在の達成率は20%ほどで、参加者100名が見えてきました!
成立めざして奮闘中です。
みんさん、どうか情報拡散へのお力添えをお願い致します!

 

2022/12/13 12:13