書肆喫茶moriと言えば、もはや海外マンガファンには説明不要な大阪・谷町六丁目にある海外コミックスのブックカフェ。実は原が『レベティコ』のクラファンを行った2019年にオープンし、今年2026年には7周年を迎えました。『レベティコ』のクラファンのときには、活動報告でインタビューをさせていただき、さらにはイベントまでさせていただいたりと、大変お世話になりました。今では「海外マンガの本棚」と「海外マンガRADIO」というポッドキャスト&YouTubeでご一緒させていただいています。あれから7年経った今、改めて店主の森﨑さんにお話をうかがいます。
Q:書肆喫茶moriは海外コミックスのブックカフェですが、海外コミックスのブックカフェというのは日本でも唯一無二なんじゃないかと思います。7年続けてみていかがですか? 楽しかったこと、大変だったこと、当時と今の違いなど、この7年間の感想をお聞かせください。
あっという間でした。7年も続いていることに自分でもびっくりしています。
2019年にオープンして1年も経たないうちに新型コロナウイルスによるパンデミックが起きて、開店休業状態になりました。あのときは本当にこの先どうなるんだろう、と目の前が真っ暗になりましたね。ですがこのことが転機となって、YouTubeや情報誌の刊行といった海外マンガの情報発信を始めることができました。結果としては良かったのかなとポジティブに考えています。
これまでに多くの方にご来店いただきましたが、当店をきっかけに海外マンガを知ったと言ってくださる方もたくさんいて、とても励みになっています。一方、日本では海外マンガは本当にマイノリティだなと日々、痛感してもいます。どうしたら海外マンガの面白さを伝えられるのか、試行錯誤の毎日です。
Q:お店がオープンした年にインタビューさせていただいたときには350冊ほどの海外マンガを所蔵されているというお話でしたが、あれから7年経って、今はどれくらいの海外マンガがおありなのでしょうか?
公式には1000冊とか1200冊とか言っていますが、1200冊を超えてからはカウントがおろそかになってしまって、正確な数字は私もわかりません(笑)
オープン当初は欧米の作品が中心でしたが、いまでは40を超える国・地域のマンガを所蔵するまでになりました。そろそろ本棚がいっぱいになりつつあるのですが、今後もどんどん増えていくんだろうなと思います。
Q:5周年を迎えた2024年にはサウザンコミックス第9弾『男の皮の物語』翻訳出版クラファンの発起人もなさいましたね。ご自身でクラファンを行い、海外マンガの日本語版を実現した感想をお聞かせください。
世界には面白いマンガがたくさんあるけれど、邦訳される海外マンガはほんのわずか。お店でご紹介しても、「日本語版はないの?」と言われてもどかしい思いをしたことは数知れません。
『男の皮の物語』は初めて読んだときに衝撃を受けて、ずっと面白いと紹介し続けていた作品でした。たくさんのご支援者のみなさまのおかげでとても素晴らしい日本語版が完成しました。多くの方に楽しんでいただけて、とても嬉しいです。「読んだよ」と直接、感想を聞かせてくださる方もいて、いつも嬉しく思っています。
森﨑さんがクラファンで発起人を務め、日本語版が出版された『男の皮の物語』
Q:もうずいぶん前の話になりますが、7年前のオープンの年には、『レベティコ』翻訳出版クラファンを応援していただき、おかげさまで無事、日本語版『レベティコ―雑草の歌』が完成しました。その後、森﨑さんとは何度も『レベティコ―雑草の歌』についておしゃべりしました。改めて森﨑さんにとって『レベティコ―雑草の歌』にはどんな魅力があるのか教えてください。
改めて読み返してみて、『レベティコ―雑草の歌』の魅力は、やはり「空気感」だなと思いました。私はギリシャに行ったことはありませんが、乾いた空気、光と影の温度差、酒場の淀んだ喧騒、しんとした夜明けの冷たさなどが、まるでその場に居合わせているかのように体感できます。そして酒場で音楽が始まると、誰ともなくすっと立ち上がり曲に合わせて踊り出す、その空気の揺らぎ……。登場する音楽家たちは自分たちの音楽が録音されることを拒否しますが、それもそのはず。音楽だけではない、その場に立ち会うことで感じ取れる場の空気感をダビッド・プリュドムは描きたかったのではないかと思います。
森﨑さんとお送りしている「海外マンガの本棚」第76回で『レベティコ―雑草の歌』を取り上げています
Q:その『レベティコ―雑草の歌』の姉妹編が目下クラファン中の『レベティッサ』です。ちょうど今、書肆喫茶moriさんには『レベティッサ』の原書も置いていただいています。パラパラ中をご覧いただいて、どんな印象をお持ちですか?
ひととおりざっと読ませていただきました。『レベティコ』と『レベティッサ』は同じ時代、共通する人物たちも登場しますが、印象は全然違いました。『レベティコ』が「空気感」を描いているのに対して、『レベティッサ』では前作では描き切れていなかった登場人物たちの「内面」を深く掘り下げているように思いました。政府から目を付けられ、明日をも知れぬなかで抱える心の葛藤。特に『レベティコ』では自らの額をかち割るといったバイオレンスなならず者のイメージがあったスタヴロスが、音楽に対してとてもストイックであることが描かれていて痺れます。
『レベティッサ』の原書を書肆喫茶moriに置いていただいています
Q:年々海外マンガに対する関わりを深めていっている印象ですが、これから先、海外マンガ関連でこんなことをしたいという見通しや夢があれば、お教えください。
海外マンガの日本語訳の企画や翻訳をもっとやってみたいなぁと思っています。『男の皮の物語』の日本語版を出せたこともあり欲が出てきました。新しいマンガも世界中でどんどん刊行されていて、紹介したい作品もたくさんあります。
海外マンガの邦訳を出すためにクラファンは有力な手段ですが、もちろんそれが欲しいを思ってくださる海外マンガのファンがいないと成り立ちません。日本で海外マンガをもっと盛り上げて、ファンを増やしていくためにはどうしたらいいのか。せっかく固定の実店舗があるので、何ができるのかをずっと考えています。いいお知恵があったら教えてほしいです。
Q:最後にお知らせがあればぜひ。
2026年9月20日(日)16時からベルギーのアーティスト、カミーユ・ヴァノフさんの来日イベントを当店で開催します。『セーラームーン』や『カードキャプターさくら』に影響を受けた魔法少女マンガ『Sentimental Kiss』は、イタリアのボローニャ・ラガッツィ賞2026のマンガ・ヤングアダルト部門で最優秀賞を受賞したポップでキュートな作品です。ふるってご参加いただければと思います。
2026年9月20日(日)16:00~「カミーユ・ヴァノフさんを囲んで」
https://bookcafe-mori.shopinfo.jp/posts/59167608?categoryIds=2205845
このインタビューはポッドキャストとYouTubeでもお聞きいただけます。よかったらぜひお聞きください。
Spotify:https://open.spotify.com/episode/5rdgnFfyLjVpOP96RCpDre?si=1d74cb4e56d645d9
YouTube:https://youtu.be/ttatLX4B5kk
森﨑雅世(もりさきまさよ)
2019年に海外マンガ専門ブックカフェ「書肆喫茶mori」オープン。海外マンガの面白さを日本で広めるべく、SNS、note、情報誌、YouTubeなどで情報発信しています。バンド・デシネ翻訳者でサウザンコミックス編集主幹の原正人さんとポッドキャスト「海外マンガの本棚 」「海外マンガRADIO」のパーソナリティを務めています。
書肆喫茶mori
住所:大阪市中央区谷町6-14-2
X(旧Twitter):@shoshikissamori
Instagram:https://www.instagram.com/bookcafe_mori
YouTube:https://www.youtube.com/@bookcafe_mori
その他各種リンクはLinktreeにまとめられています:https://linktr.ee/bookcafe_mori
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