書肆喫茶moriさんは大阪・谷町六丁目にある海外コミックスのブックカフェ。2019年7月にオープンすると、海外マンガファンの注目を集めています。店主の森崎雅世さんは海外マンガ関連の話題にアンテナを張られていて、『レベティコ』プロジェクトもさっそくご支援くださっています。
先日のキックオフMTG(レベティコ作戦会議)にもSkype参加してくださった森崎さんに、一問一答形式でインタビューしました!
Q:お店の写真を拝見すると、壁一面に海外マンガが並んでいて壮観ですね。いったいどれくらいの海外マンガがあるのでしょうか?
日本語訳された海外マンガを中心に、現在350冊ほどあります。
冊数でいえばまだまだですが、半年前のオープン時には200冊くらいだったんですよ。いつの間にこんなに増殖したのか、自分でいうのもなんですが、ちょっと驚いてます。これからも新しい作品、まだ集めきれていない作品を少しずつ増やしていけたらなぁと思っています。
店内の様子
Q:気になっているけど、まだお店に行ったことはないという方もたくさんいるのではないかと思います。書肆喫茶moriさんがどんなお店なのか、ご説明いただけますか?
明治40年築の古民家長屋をリノベーションしたブックカフェで、店内でお茶しながら本棚にある海外マンガを自由にご覧いただけます。本の販売は今のところしておりませんが、ボルシチやピロシキ、ロシアのスイーツなどフードメニューもご用意しており、ゆっくりおくつろぎいただけるようになっています。
当店のある谷町六丁目は赤本マンガの出版社が集中していた松屋町にもほど近い場所です。手塚治虫が出版社へと走り回り、辰巳ヨシヒロの『劇画漂流』の舞台ともなった時代からこの場所にある古民家カフェで、往時に思いを馳せながら(馳せなくてもいいんですが)海外マンガを読みふけっていただければと思います。
古民家カフェの趣がある入り口
Q:海外マンガは昔からお好きだったのですか?
実は海外マンガを初めて知ったのは2016年に開催された「ルーブルNo.9」展で、本格的に読み始めてからまだ1~2年の超初心者です……。「ルーブルNo.9」展も日本の作家さん目当てで行ったのですが、そこで初めてバンド・デシネを見て衝撃を受けました。まずフルカラー! その彩色の美しさに心奪われ、日本のマンガとの違いに驚きました。
とはいえ、どんな海外マンガが翻訳されているのかもわからず、フランス語ができるわけでもないので原書を購入してもなぁ、としばらくそのままになってしまっていたんです。
ある日偶然、大型書店のマンガコーナーの片隅に海外マンガが置かれていることに気づいて、「これは!」と思って即買いしました。日本のマンガも大好きなのですが、それとはぜんぜん違う、読み応えのあるストーリー、美しい色彩や作家さんごとに特色のある自由なビジュアル表現、海外の歴史や文化などこれまで知らなかった世界に触れられる楽しみ……そのあとはひたすら海外マンガにハマってしまいました!
Q:お店を始められた経緯をお教えください。
友だちに「海外マンガがあるの知ってる?」と聞いてもほとんど誰も知らないんです。ちょっと前まで私もそうだったんですけど(笑)。
こんなに面白いのに知らないなんてもったいないなぁと思いつつ、海外マンガは日本のマンガに比べるとやや高額だし(判型が大きかったりフルカラーだったりということを考えるとそれだけの価値がある、というかお得なのでは、と思う作品ばかりなのですが!)、どんな本が翻訳されているのかもわからない。初心者には少しハードルが高い。
どうしたら気軽に読んでもらってこの面白さを知ってもらえるかなぁと考えて、当時、会社を辞めて無職だったこともあり、海外マンガが読めるブックカフェをやってみたら面白いのでは、とお店のオープンを決めました。
海外マンガを知らない人、読んだことがない人でも当店で気軽に読んでいただくことで、海外マンガのファンがもっと増えたらいいなぁと思っています。
Q:書肆喫茶moriさんでは、読書会などさまざまなイベントも行われているのですよね?
月1回「海外コミックスについてまったりしゃべる会」を開催しています。それぞれの回で設定したテーマについてご飯を食べたりお酒を飲んだりしながらおしゃべりしましょう、というゆるい会です。海外マンガにとても詳しい方からあまり読んだことがない方まで、さまざまな方が参加してくださってます。
その場で読む読書会など、海外マンガを楽しめるイベントをこれからもいろいろ企画していきたいと考えています。
Q:無事翻訳出版されたあかつきには、ぜひ『レベティコ』もお店に置いていただきたいです。今回サウザンコミックスというレーベルの立ち上げを目指し、その第1弾として『レベティコ』のクラウドファンディングを行っているわけですが、応援メッセージをいただけますでしょうか? 『レベティコ』は英語版を購入されて、お読みになったのだとか?
はい! 『レベティコ』を読ませていただいてまず印象深かったのが、影の描写! 昼間の屋外の乾いた空気、夜の酒場の沈殿する空気、そして薄明から夜明けにかけての透明な空気……そういった空気感を肌で感じられるような光と影の表現が素晴らしい。
それから登場人物たちがみんな魅力的なんです。まっとうな職に就くこともできず、警官ににらまれ、アウトサイダーにしか生きられない男たち。別の人生を提示されても、それを拒絶する、刹那的で破滅的で悲哀に満ちた男たちの生きざまに胸を撃ち抜かれました!これを日本語版でちゃんと読みたいですね!
アウトサイダーたちの物語『レベティコ』
Q:まだ日本語には翻訳されていないけど、ぜひ翻訳してほしいという海外マンガがあれば、教えてください。
個人的な趣味全開でお恥ずかしいのですが、ティリー・ウォルデン(Tillie Walden)さんの『ON A SUNBEAM』です。彼女の作品は自伝マンガ『スピン』が翻訳されていますが、この作品はSFファンタジーで、繊細な少女たちの心情とファンタスティックな世界観の描き方がとても秀逸なのです。
『ON A SUNBEAM』ティリー・ウォルデン
あとコロンビアのイラストレーター、ロレーナ・アルヴァレス(Lorena Alvarez)さんの『Nightlights』もぜひ翻訳してほしいですね。子ども向けの作品で、絵を描くことが大好きな少女サンディが迷い込む空想世界がとても色鮮やかで、可愛いだけでなくちょっと怖いところもあって惹きこまれます。コロンビアがどういう国なのか私にはあまりイメージがないのですが、ロレーナさんの作品が彼女が生まれ育った土地の活気や色彩に影響を受けたそうなので、コロンビアという国にも興味が湧いてきます。
『Nightlights』ロレーナ・アルヴァレス
Q:最後に、このインタビューを読んでくださっている読者の方に何かメッセージがあればどうぞ。
バンド・デシネの原書が読みたくてフランス語の超初心者テキストを買ってはみましたが、スラングなども出てくる海外マンガを原書で読むのは大変です。もちろん絵を見て何を言っているのか想像するという楽しみ方もありますが、やはり私は書かれていることも理解したい! なので日本語訳版が出版されるということは何よりもありがたいことです。
当店を始めた目的のひとつに、海外マンガのファンをもっと増やして、翻訳出版業界をもっと盛り上げられたら、知られざる名作海外マンガがもっと翻訳されるんじゃないか、というのがあります。とても大それたことで当店のような小さな店でできることは限られていますが、少しでもそのお役に立てればいいなぁと思っています。
そんななかで「世界のマンガの翻訳出版の新レーベル サウザンコミックス」が始動して、世界の素晴らしい海外マンガが日本語で読めるというのは、本当に楽しみでなりません。ぜひみなさんにもこのプロジェクトを応援してもらいたいです。
あ、よろしければ、当店のことも応援してくださると嬉しいです。
サウザンコミックス編集主幹の原が書肆喫茶moriさんにうかがい、
『レベティコ』プロジェクト応援イベントを開催します!
海外マンガの面白さや現在クラウドファンディング開催中の『レベティコ』を語ったあと、お茶しながらのフリートーク。
・日時:2020年 1月25日(土) 14:00~16:00
・場所:書肆喫茶mori
・参加費:1500円
(『レベティコ』の舞台ギリシャのお菓子とコーヒーまたは紅茶付き)
▼詳細や参加申し込み方法は以下のホームページをご覧ください。
https://bookcafe-mori.shopinfo.jp/posts/7514947