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マンガで学ぶペタンクの文化と魅力
フランス発の学習マンガ『ペタンクの歴史・仮』を翻訳出版したい!

フランス語翻訳家の原正人さんからの応援メッセージ

皆さん、こんにちは! 原正人と申します。フランス語圏のマンガ“バンド・デシネ”を中心に翻訳の仕事をしつつ、サウザンブックスのレーベル“サウザンコミックス”の編集主幹もさせていただいています。サウザンコミックスではちょうど今、第6弾となるデイヴィッド・マッズケリ『アステリオス・ポリプ』を翻訳出版するためのクラウドファンディングを行っています。よかったらそちらもぜひ覗いてみてください。

さて、三宅雅之さんが発起人となって『ペタンクの歴史・仮』というフランスのマンガ(=バンド・デシネ)を翻訳出版するためのクラウドファンディングが行われると聞いて、僕は度肝を抜かれました。ペタンクのバンド・デシネ……だと!? そんなものがあったんだ!?

そもそもスポーツものがやたらたくさんある日本のマンガと比べると、バンド・デシネのスポーツものは微々たるものです。とはいえ、まったくないというわけでもありません。2018年の冬に行われた「コミックマーケット95」のカタログの「AIDE新聞」に、『ユーロマンガ』(バンド・デシネを精力的に翻訳出版する貴重な出版社の名前であり、同社が出版している雑誌の名前でもあります)編集長のフレデリック・トゥルモンドが「バンド・デシネにおけるスポーツ」という記事を寄せていて、実はバンド・デシネにも案外スポーツものがあるんだよと教えてくれています。実際、そこには20作ほどのスポーツものバンド・デシネが紹介されていて、中にはセネガル相撲やハンドボール、サーフィンなど、日本でもあまり見かけないものも含まれていたりします。ところが、その記事でも本書のことは見過ごされていました。

改めてバンド・デシネのアーカイブ系サイトで検索してみると、ちゃんと登録されてる。ほんとにあるんだ……。とはいえ、バンド・デシネの文脈では、知る人ぞ知る作品でしょう。しかも、作画を担当しているのは『アステリックス』で世界的に有名なアルベール・ユデルゾの弟マルセル・ユデルゾ。テーマといい、人選といい、シブい、シブすぎる……。

僕は通常の翻訳出版ルートではなかなか出版されない海外マンガを翻訳出版するためにサウザンコミックスというレーベルを立ち上げたわけですが、本書こそ通常ルートではまず確実に翻訳出版されない作品です。おそらく本国フランスでも今では古本でしか手に入らないのではないかと思いますが、そういう本を今このタイミングで甦らせるという意味でも、バンド・デシネにもこういうものがあるということを知らしめるという意味でも、この本が実際に翻訳されたら快挙でしょう。いやはや、三宅さん、「シャポー(Chapeau※フランス語で脱帽の意)!」です。

ちなみに僕が2021年から2022年にかけて『ユーロマンガ』の電子版で翻訳連載したシリル・ペドロサの『ポルトガル』という作品に、登場人物たちがペタンクに興ずるシーンが登場します。この場面の舞台はフランスのブルゴーニュ地方の片田舎で、主人公の従姉の結婚式が終わった翌日、ちょっとした騒動が持ち上がるのですが、主人公の伯父はそんな騒ぎをよそに仲間たちとペタンクをしています。真っ昼間からのんびりペタンクに興ずるオヤジたち。ちょっと最高じゃないですか?

このクラファンが無事成立して、『ペタンクの歴史・仮』を日本語で読めるのを心待ちにしています。

 

バンド・デシネに描かれたペタンク(『ユーロマンガ』Vol.8、P294)

 

 

サウザンコミックス編集主幹 原 正人(はら・まさと)

1974年、静岡県生まれ。翻訳家。フレデリック・ペータース『青い薬』(青土社)、トニー・ヴァレント『ラディアン』(飛鳥新社)、バスティアン・ヴィヴェス『年上のひと』(リイド社)、ダヴィッド・プリュドム『レベティコ―雑草の歌』(サウザンブックス)など訳書多数。『レベティコ―雑草の歌』を第1弾として始まったレーベル“サウザンコミックス”では、既に5つのプロジェクトが成立。現在、第6弾としてデイヴィッド・マッズケリ『アステリオス・ポリプ』翻訳出版クラファンを実施中(2022年12月15日まで)。

 

 

 

2022/10/14 14:40