はじめまして。大西愛子と申します。フランスのマンガ、バンド・デシネの翻訳者で、サウザン・ブックスさんでは『ワイン知らず、マンガ知らず』という作品で大変お世話になりました。この度三宅雅之さんが発起人となり『ペタンクの歴史・仮』というバンド・デシネを翻訳出版するためのクラウドファンディングが行われると伺い、概要を見てすぐに支援させていただきました。
ペタンクというスポーツはわたしが留学した南仏ではとてもポピュラーな球技で、週末になると町や村のあちこちでゲームが行われるのです。とても懐かしい気分になり、あのカンという球の衝突音がよみがえりました。
また作品に携わった方々が豪華で、シナリオと語り手を担ってるのがアンリ・サルヴァドール。ペタンクの名手とは知りませんでしたが、子どもの頃よく聞いていた歌があるので、あの温かみのある声で語られるイメージがすぐに沸きました。
また、作画担当がマルセル・ユデルゾ。フランスの国民的人気バンド・デシネ『アステリックス』の作画家アルベール・ユデルゾの弟さんだとか。こちらもとても興味深いです。
ペタンクと言えば、60年代70年代に活躍したサシャ・ディステルという人の歌で「ラ・ペタンク」という歌があります。こちらです。
イントロで聞こえるカチンという音がペタンクの球のはじける音です。
7月になると南仏の村ではもうじきパリジャンたちがやってくる
また彼らにペタンクを教えよう
最初は彼らに勝たせてやろう
でも調子に乗ったころに名手フェルナンが登場
片目つぶって狙いを定め、そして毎回…
カロ!
勝負が終われば酒場に繰り出しパスティスを飲む
パリジャンのおごりで
そして次の日はまたリベンジ
なぜならペタンクこそバカンスだから
と、ざっとこういうような意味の歌ですが、なんとも底抜けに明るくて楽しげだと思いませんか? まさに、これがペタンクの雰囲気なのです。
ちなみにリフレインで何度も繰り返される「カロ」というのがこのスポーツの技です
バンド・デシネの原書も拝見しましたが、色遣いなど本当に明るくて、こちらもまたペタンクの雰囲気を出していると思います。
でも実はペタンクはれっきとしたスポーツで、かなり細かいルールがあり、それも巻末に載っています。まさにペタンクの教科書みたいなバンド・デシネです。
留学前に担任の先生からトゥルーズに行くのならペタンクを覚えて行ったほうがいいと言われ、手ほどきをうけたのですが、どうもずいぶんといいかげんなことを習っていたみたいです。実際に現地でプレイすることはありませんでしたが、もししていたらかなりいろいろ反則を犯していたのではないでしょうか。
あの頃の楽しい風景を思い出しながら、クラウドファンディングの成立を心より祈っています。
大西愛子(おおにし あいこ)
フランス語翻訳・通訳。父親の仕事の都合でフランス及びフランス語圏で育つ。主な訳書にステファヌ・マルシャン『高級ブランド戦争 ヴィトンとグッチの華麗なる戦い』(駿台曜曜社)、エマニュエル・ギベール、ディディエ・ルフェーヴル、フレデリック・ルメルシエ『フォトグラフ』(小学館集英社プロダクション)、エマニュエル・ルパージュ『チェルノブイリの春』(明石書店)、カトリーヌ・ムリス『わたしが「軽さ」を取り戻すまで』(花伝社)など。最新刊は長らく手掛けているフアン・ディアス・カナレス作、フアンホ・ガルニド画「ブラックサッド」シリーズ第6巻「そして、すべて堕ちる」(飛鳥新社)
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