こんにちは、サウザンブックスPRIDE叢書です。
東京大学准教授でクィアスタディーズを専門とされる福永玄弥さんから、
応援メッセージが届きました!
シスジェンダーで異性愛であることが社会の仕組みの根底をなし、にもかかわらずその事実が人びとに意識されないほど自明視されている社会のなかで、規範から逸脱的なジェンダーやセクシュアリティを語ることばを探すのは、とてもむずかしい。わたし(たち)を語るためのことばは断片化されて社会のあちこちに散らばっているからだ。
マラン(말랑)とシェイエン(샤이앤)というふたりのトランスジェンダーの旅路も、そうした断片を一つずつ拾いあげるものだっただろう。その旅の途上、マランはピョンヒス(변희수)に出会った。トランスした兵士として、だれも歩んだことのない道を生きたピョン・ヒスは、マランの作品に宛てた推薦文で次のように書いている。
「マランとシェイアン、誰よりも勇気のある二人の作家の漫画が、アイデンティティを確定させる途上にあったりアイデンティティを隠すほかに選択肢をもたない人びとのために役に立つこと、トランスジェンダーの希望になること、そしてわたしたちに向けられた差別や蔑視があったことを示す史料になることを願っています」(原著巻末の推薦文)
ピョン・ヒスは、退役したら彼女に手を差し伸べてくれた人たちのような社会活動家になって、「第二、第三のピョン・ヒス」を支援したいと夢を語っていた。彼女の生は23歳で絶たれたが、彼女の夢はマランとシェイアンが書いた記録(史料)として実りを結んだ。
このクラウドファンディングはきっと成功するだろう。韓国語で出版された二冊の本が一冊になって日本語で読める日がくるのが、待ち遠しい。
福永玄弥(東京大学准教授、クィアスタディーズ)
コメントで言及したピョン・ヒスについては「東アジアのクィア・アクティヴィズム:安全な空間と不適切な身体」と題したエッセイに追悼文を記した。