「イギリスの書店はいつも美しい土地の中心に建っている!」――『英国本屋めぐり』の著者、ルイーズ・ボランドさんの言葉ですが、これは確かにほんとうのことです。イギリス旅行とイギリスの書店が大好きな人間のひとりである私も、心から同意します。
ちょっと斜めにゆがんだような古い石造りの建物に足を踏み入れると、壁一面、天井まで届く書棚に本がぎっしり。なんなら床まで山積みのことも。棚の側面に貼られたヨレヨレの貼り紙がジャンルの分類を示すほかは、並べ方はざっとしたものであったり。外国語の書名や作者名を、苦労しながら読んでいくのは、宝の地図の暗号を解くような気分。……と、そのうち、いかにも古そうな赤や黒の革の背表紙にぶつかって。胸は高鳴り、ほこりで指を汚しながらそっと開くと……やった、これは、お目当ての19世紀の挿絵本……!
私の理想のイギリス書店めぐりといえば、おおむねこんな感じです。『英国本屋めぐり』の原書をぱらぱらめくって、写真や地名や店名を見ていると、あの喜びが次々によみがえってきます。古い町の古い建物に入っている本屋さんは素敵だし、倉庫のような巨大古書店もまた楽しい。本の街ヘイ=オン=ワイは興奮したなあ! そうそう、犬や猫が店番をしているお店もあったっけ……。
旅と書店が好きな同好の皆さんなら、もちろん目的地探しのガイドブックとして参考になりますし、旅の気分に浸りたい! あるいはただただ書店や本のある風景が見たい! という人にもおすすめです。ぜひプロジェクトが成功しますように、応援しています。
Scarthin Books(Cromford)2013年
Richard Booth (Hay-on-Wye)2014年
村上リコ
文筆・翻訳家。19世紀から20世紀にかけての英国の日常生活をテーマに活動している。著書に『図説 英国メイドの日常』『図説 英国貴族の令嬢』(河出書房新社)など。訳書にトレヴァー・ヨーク『図説 イングランドのお屋敷』(マール社)アニー・グレイ、アンドリュー・ハン『ミセス・クロウコムに学ぶ ヴィクトリア朝クッキング』(ホビージャパン)など。アニメやコミックのアドバイザーも務める。
ブログ:https://murakamirico.blogspot.com/
twitter:https://twitter.com/murakamirico